前兆の神秘…水魚道人著
現在からちょうど100年前の1926年に書かれた一冊。科学万能の世が到来したと考えられていた当時、いわゆる「虫の知らせ」や「夢知らせ」などの不思議な吉凶禍福、「前兆」の類いを、人々はどのように認識していたのか。著者は冒頭で「世に偶然の出来事なし」と表明し、様々な不可思議な現象の具体例を挙げて考察していく。
日食月食、不知火や蜃気楼の仕組み、「優曇華の花」の正体(ウスバカゲロウの卵)は100年前当時にはすでに科学的説明のつく現象だったが、それより数百年前には説明しかねる不可解な事象だった。著者はこのことを根拠に、現在の知識程度では立証できない神秘的な物事も科学の進歩によって数百年とたたずして説明できるようになるかもしれないとして「『まったくない』と断定するのは早計」と主張する。
迷信を迷信と一笑に付すことなく、世界的な話題となり盛んに議論されたツタンカーメンの呪いやスピリティズム、自然現象の怪、占い、夢の不可思議などについて科学や天文占術など多角的な視点から触れている。不可思議を盲目的に迷信するのではなく、また全て否定するのでもなく、何事も探究、究明せんと挑む著者の姿勢には、現代の我々も見習うべきものがある。
定価3300円、国書刊行会(電話03・5970・7421)刊。



