東洋学術研究 第65巻第1号 東洋哲学研究所編
巻頭特集は「文学の力」。作家の宮本輝氏と東洋哲学研究所の田中亮平所長による特別対談では、宮本氏自身の体験とそれぞれの作品世界との関係から、作中に表現された死生観や師弟観、歴史観の淵源を探っていく。加えて「文学における芸術と思想」をテーマに、文学および文学研究の諸価値を、宗教・哲学との交錯領域において再定位しようとする3本の論考を掲載。トルストイ作品内部における芸術家と思想家としての二面性を扱いつつ、その無抵抗思想と仏教学的視点との親近性を指摘する論文や、フェミニズム文学運動を通してエッセーにおける語りの意味やジャンル越境性を論じるもの、ドストエフスキー作品にニヒリズムを超克する精神性を見いだそうとする考察などが行われている。
東洋哲学研究所が2025年に開いた連続講演会「イスラームと仏教の対話」全4回の内容も所収する。宗教や文化の違いを背景とした対立や紛争が絶えない時代に「異なる信仰を持つ者同士がいかに協力し合えるのか」という問いに向き合いながら、イスラームと仏教の日常生活の中での交流や、東南アジアやインドでの歴史的接触、そして現代日本における共生の課題などといった多角的な視点から、宗教間対話の意義と可能性を探究している。
定価1650円、東洋哲学研究所(電話042・691・6591)刊。




