人のふり見て
十数年ぶりだろうか。ニュースで流行は知っていたがどこか人ごとだったインフルエンザに新年早々罹患した。コロナ禍もあってここ数年、マスクや手洗いには十分気を使ってきたつもりだった◆急な発熱でほとんど起き上がることもできず、市販の解熱剤では焼け石に水。休日でも発熱外来を開けていたクリニックで治療薬を処方してもらうことができたのは不幸中の幸いだった◆会社にはしばらく休む旨を連絡して一人で療養していると、部下から「いつまで休む予定ですか?」とのメッセージが届いた。本人に悪気はなくただの確認のつもりだったのかもしれないが、高熱と頭痛、倦怠感などに苛まれて自分の意思ではどうにもならない最中に、見通せない予定を尋ねられたことで何とも言えない気持ちになった◆復調してから改めて考えてみた。「人のふり見て我がふり直せ」ということわざもある。何げない一言で他者をひどく傷つけたことがあったかもしれない。忙しさにかまけてこちらの都合を相手に押し付けたことはなかっただろうか。普段ならなんら問題のない言動も受け取る相手の状況次第では不快なものになり得る◆日頃から心掛けるべきは、時機に応じて相手を思いやる心であり、自らの鏡として他者と共感しようとする姿勢なのだと肝に銘じた。部下からの短い通知は自らを省みる脚下照顧の良い機会となった。(佐藤慎太郎)