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抵抗感減ったAI技術利用 何が失われるか精査すべき時

東京工業大教授 弓山達也氏

時事評論2024年6月5日 12時42分

仕事上、4、5誌の学術雑誌の編集や審査に関わっている。このところ目につくのはVR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)など、科学技術とこころやいのちに関わる論文だ。審査の関係で詳細は書けないが、VRを用いての慰霊や基礎教育に関わる論文などを興味深く読んだ。ちょっと前だったら、対人・対面を重んじる領域で、科学の力は大きな抵抗にあったに違いない。

東工大に赴任してすぐに宗教研究ということで「ホログラム供養の商品化」プロジェクトにお誘いがあった。2015年のテレサ・テンの追悼ホログラムコンサートにヒントを得たようだったが、何となくその時は「やってはいけないこと」というイメージが強く、結局は立ち消えになった。実際、19年の紅白歌合戦のAI美空ひばりの登場には賛否両論の感想が寄せられ、その中には「冒涜だ」との意見もあったという。

この頃、天台宗のVR動画「市川猿之助と巡る比叡山回峰行者の歩む道」も話題になり、筆者は制作に関わった一人にインタビューした(『現代宗教2019』オンライン公開)。制作に強い反対はなかったが、現場からは「行は遊びではない」「そんなふうに見せるものではない」という意見が出されたらしい。個人の体験をデジタルに複製・再現することへの警戒以前に、それを念頭において機材を用いて見せる/見られるということ自体への「拒む気持ち」があったという。

しかしこうした抵抗感が大きく変わったのは、コロナ禍であろうか。オンライン、リモート、バーチャルなどさまざまな形の慰霊や参拝が今や懐かしくさえ思い返されるが、定着したかは別として、抵抗感が和らいだのは事実だろう。教育界でいうと「オンラインでは教育できない」と言う人がいないのと同じで、教育に新しい技術を活用する抵抗感は少なくなった。

こうした中、熊谷誠慈京大教授の進める仏教対話AIブッダボットや、それをよりリアルな感覚を伴わせるARを活用したテラ(1兆/寺)バース(宇宙)はどのように受け止められるのだろう。テラバースver.1では、スマホ画面にアバターのブッダが現れ、テキストまたは音声入力で話しかけると、仏教経典に基づいた回答が返ってくるという。20代の僧侶とこれを話題にした時、「お坊さんいらなくなる」が第一声だったが、一般の人はどういう反応なのか知りたい。

実は筆者自身も迷いがある。科学技術を活用した教育の大型プロジェクトに参加しているが、現場からの反応は必ずしも良いものばかりではなく、そもそも「実験」という言葉自体が学校現場にそぐわない。

先の熊谷教授は、寺院は極楽浄土を仮想的に再現したものだとし、仏教とVRの親和性を説く。筆者もそう思うが、これは一般に受け入れられるのだろうか。オンライン授業になった時、「リアルと同じようにできる」と思ったが、今はむしろそこで失ったものに気づくことが多い。自戒を込めて言うが、研究者はどうしても機能が同じならどれでもいいと思いがちだ。しかし、むしろ科学技術で何が失われているかを精査する必要があるのだろう。

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