PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン

旧統一教会の宗教法人解散 改めて「信教の自由」とは?

京都府立大教授 川瀬貴也氏

時事評論2025年4月16日 09時28分

3月20日に、地下鉄サリン事件からちょうど30年となった。テレビで特番が組まれるなど、もう一度あの事件を振り返ってみようという動きが各所であった。もう30年か、もしくはまだ30年か、と人によって感じ方は違うだろうが、あれが日本の歴史上、「宗教」そのものに対する見方を大きく変えた事件であったことには異論はあるまい。

また「カルト」という言葉が日本社会に定着したのも、この事件であっただろう。当時東京在住だった私が被害者とならなかったのは単に運の問題に過ぎない、と改めて思う。

このような凶悪な犯罪を理由として、1996年に史上初めて宗教法人解散命令を出されたオウム真理教だが、3例目の解散命令が、この3月25日に東京地裁において旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対し下された。

報道されているように、今回の解散命令は「生活を破壊するほどの高額献金」を民法上の不法行為としたもので、これまで解散命令を出す事由とされた刑法上の犯罪(殺人、誘拐、拉致、詐欺など)とは少し様相が異なっている。そもそも我々は、基本的に刑法で裁かれるような犯罪を起こした教団を事後的に「カルト」と呼んできた。単に奇矯な行動だけなら、マスコミや一般の人はともかく、宗教研究者がそれだけでその集団を「カルト」と呼ぶのはレッテル張りと遠慮していた側面は確実にあった。私も学生から時々「先生、カルトの定義ってなんですか?」という質問を受けるときがあり、そのたびに上記のような定義で説明してきた。

旧統一教会側からは「今回の決定は宗教法人法の法令違反に関して、これまで解散事由になかった『民法の不法行為』が含まれましたが、これは、民法上の不法行為が宗教団体の解散事由に該当するということに他ならず、日本の信教の自由、宗教界全体に大きな禍根を残すものと考えます」という反論が出され(当教団サイトより引用)、今回の東京地裁の解散命令に対し即時抗告すると表明しており(7日に即時抗告)、おそらくこの問題は最高裁までもつれるであろう。

彼らは「信教の自由」の侵害を声高に唱えているが、ここで思い出したのが、フォト・ジャーナリストの藤田庄市氏の造語である「スピリチュアル・アビュース」という言葉である(『カルト宗教事件の深層―「スピリチュアル・アビュース」の論理』春秋社、2017)。

藤田氏は数々の「カルト事件」の背後には、共通して「信教の自由の名のもとに、実質的に人々の精神の自由を毀損するスピリチュアル・アビュース(霊的虐待)が存在する」ことを主張している。これは要するにその宗教上の教えでもって、その人の人生や選択を著しく狭めてしまうように仕向けること、とまとめられるだろう。

個人的には今回の「解散命令」は妥当とは思うが、これまでの歴史的経緯もあり国家が介入を控えてきた「家族」と「宗教」という領域に介入した、ということは銘記しておきたい。この介入が過度にならないように監視する義務は、我々市民の側にある。

在日コリアン教会の今昔 社会の多数派が見落としたもの 川瀬貴也氏3月4日

日本と韓国の宗教情勢の一番の違いは、キリスト教の存在感であろう。日本は全人口の1%ほどで長らく推移している一方、韓国は現在カトリック、プロテスタント合わせて約3割弱の国民…

デジタルの拡散とフィジカルな場の価値 リスク社会におけるAIと宗教の対話 稲場圭信氏2月17日

衆議院選挙の最中、生成AIを用いて作成された偽動画がインターネットおよびSNS上で拡散された。同質的な意見や価値観が強化されるエコーチェンバー現象によって、特定の思想が短…

「自己決定」への戸惑い 母の穏やかな最期を看取る 弓山達也氏2月4日

昨年末、母が他界した。現代宗教やスピリチュアリティの研究者として、家族の死や葬儀の問題などを講義中に話したり、論文指導をしたりするものの、自分のこととなると戸惑うことも多…

高市与党一強時代 「良心の府」としての宗教(2月27日付)

社説3月4日

21世紀の寺院 活動形態の変化進む(2月25日付)

社説2月27日

原発事故から15年 避難者らのいのちの訴え(2月20日付)

社説2月25日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加