パーリ語初期韻文経典にみる 最古の仏教…並川孝儀著
原始仏教の中でも特に成立が古いとされる初期韻文経典を分析し「最古の仏教」の根本的立場を解明しようとする一冊。最初期の仏典を成立順に分類し、比較研究することで、原始仏教の早い段階で仏教の教理化が始まっていたことを明らかにした。
従来の原始仏教研究は、全ての初期経典にゴータマ・ブッダの教えが説かれているという前提で行われてきたが、初期経典は、先に成立した韻文経典と、遅れて成立した散文経典で説示内容が大きく異なる。著者は、初期韻文経典と散文経典を明確に区分し、韻文経典の説示に限定してテキストを分析することで、仏教の最も根本的な姿を描き出した。
さらに、初期韻文経典を最古層、古層、新層の3層に分類し、四聖諦、三宝、三学、修行法など様々な視点からそれぞれの記述を比較することで、ゴータマ・ブッダの説いた素朴で具体的な教えが教理として体系化されていく流れを明らかにした。例えば四聖諦は、最古層の『スッタニパータ』第5章「パーラーヤナ・ヴァッガ」の時点では、四聖諦それぞれの要素が個別に説かれているが、古層になると、苦諦・集諦・滅諦・道諦の規定が具体的になり、新層で八聖道と一体化し「四諦八聖道」という教理が完成したことが分かる。
定価4180円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。



