増訂 日本占領と宗教改革…岡﨑匡史著
GHQによる天皇やキリスト教を巡る政策や情勢を考察し、保守の立場から「人間宣言」や「神道指令」を積極的に評価し直そうと試みる斬新な視点を提示する。
マッカーサーは「神から与えられた使命」として日本のキリスト教化を進めたことで知られる。米国宗教界の強力な支援のもと、宣教師優遇、教科書のキリスト教記述の検閲、日本のキリスト者の戦争責任の免責を行い、国際基督教大設立を主導した。史料は天皇改宗も目指していたことを示す。
しかしキリスト教化は大きな成果を上げなかった。その要因は日本人の国民性などこれまで様々に論じられてきたが、著者は、GHQ民間情報教育局宗教課のバンス課長に注目する。当初は禁止していた学校教育への宗教の導入構想に、バンスは強固に反対し頓挫した。共産主義への対抗に利用しようとする思惑も強まる中、バンスが起草した神道指令に始まる「厳格な政教分離」の方針は占領中に基本的に厳守され、日本政府に引き継がれた結果、キリスト教はもちろん、興隆する新宗教の教育介入を防いだと評価する。
また人間宣言の作成の経緯を分析し、天皇の神格化を否定しただけで、祭祀者としての「本来の」天皇の在り方に戻し、巧妙に国体護持を実現したと捉える。
定価8250円、法藏館(電話075・343・0458)刊。


