PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

「いのちを支える杖」をめざして ―「今に意味を」に向き合う(2/2ページ)

いのち臨床仏教者の会事務局長 西岡秀爾氏

2014年3月6日
◇宗教ありきではなく現場あっての宗教

ブッダの教えは普遍的だが、私にとって何より支えとなっているのは、仏縁によって出会った方々からの生のメッセージである。ただ寺に生まれたにすぎない私が、宗教者として生きていく覚悟ができたのは、仏教を勉強したからでもなく、本山へ修行に行ったからでもない。苦を抱える方々との出会いによって、宗教性や人格が磨かれつつあると確信したからである。温かい人格同士の触れ合いを通して、心から「自分は自分でいい」と自己肯定できた。

そして、自ら作り上げていた聖人君子的な「僧侶像」から解放され、心が軽くなった。「死人にたかる禿鷹」「坊主丸儲け」といった宗教者に対する揶揄に萎縮することなく、人間臭いありのままの自分で勝負できるようになった。つまり、未熟で卑しい自分を心から受けとめることができて、はじめて目の前にいる人たちをそのまま見つめられるようになったのである。

自分が自分でいいように、周りの人たちもそのままでいい。多様性・特異性を認め合い、足りないところは補い合えばいい。いい意味で「良い加減」になったと思う。要するに、世間の常識に流されることなく、かといって独善的になることなく自らの内面に向き合い「我に返る」ことで得られる安心感である。

誰もがいつの間にか多くの荷物を背負っている。状況に応じてその荷物を下ろすことができれば、さほど負担は感じない。だが多くは、得体の知れない荷物を背負い続けたままやり過ごしている。自在に背負ったり下ろしたりすることができれば、いくら重くてもなんとかなる。気持ちに余裕があるからであろう。

しかし、余裕なき身には堪える。対処法の一つとして、立ち止まり背負っている重荷の中身を確認することが挙げられる。そのような際、宗教者は「気づきの場」を用意する格好のコーディネート役となる。「共祈者」「支持者」「同行者」という宗教者ならではのかかわりは、新たな価値観を生むことになるだろう。たとえ、またすべての荷物を背負ったとしても、自らの意思で背負えば足取りは軽くなる。

私たちは、競争社会による「忙」しさによって、文字どおり心を失いがちではないだろうか。そんな中、宗教は他人と比較するのではなく、一貫して自分の内面と対話する道を説き続けてきている。自らを見失わないための、また本当の幸せを追求するための、良き杖となるであろう。

◇たかが宗教されど宗教

そもそも心のサポートなど意図的にできるものではない。偶然に歯車が合えば、目の前にいる人の動力になることがある。しかし、それも延いては本当に適切な作用であったか否かは誰にもわからない。とは言え、その場その時の関係性による新たな力が立ち現れることを願い、「一人にだけはさせない」というひたむきな思いだけは持ち続けるべきである。そして近い将来、「かかりつけ医(身体を診る医者)」ならぬ「かかりつけ僧(いのちを支える僧侶)」があたり前となり、より包括的な寄り添いが可能になるのを期してやまない。

皆が、人生の節目節目で「生きている喜び」を感じ、さらに最期には、数々の試練を耐え忍び「生まれてきて良かった」と頷けるよう伴走したい。

現代において、宗教は果たして人々の「生きる力」となり得るか否か。宗教者自らが、目の前にいる人と向き合い、同時に自らの内面と正直に向き合い行動し続けていくしかない。向き合えば、自然と道は拓けてくるであろう。

『安芸国神名帳』奉唱の再興 神仏合同の世界平和祈願祭を契機として 瀨戸一樹氏4月3日

はじめに 令和7(2025)年、終戦80年の節目の年を迎えた。今なお世界では戦禍で苦しむ人々が後を絶たない。同年12月、被爆地・広島で活動する広島県青年神職会・広島密教青…

《宗教とAI③》AI時代に深める対機説法 井上順孝氏2月27日

AIへのアウトソーシング 2024年度に某大学で講義していたとき、学生が提出するレポートにAIを使っている割合が急に増えたのを感じた。宗教について初めて教わった学生が書く…

《宗教とAI➁》ブッダボットで変わる仏教 亀山隆彦氏2月12日

一、 筆者は日本仏教専門の仏教研究者だ。特に古代~中世の日本密教の実態解明を目標に研究を続けている。近年、その作業を通じて、ある理解に到った。それは日本仏教僧が高度な思想…

殺傷武器輸出解禁 その危うさに意見発信を(4月29日付)

社説5月1日

宗教関与の「暗と明」 ハンセン病なお続く差別(4月24日付)

社説4月28日

文化財盗難の多発 防犯対策、意識啓発を(4月22日付)

社説4月24日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加