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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

偏見を乗り越えるために(2/2ページ)

国際仏教婦人会理事・全日本仏教婦人連盟理事 丸山弘子氏

2019年7月1日 11時26分

長瀬美咲師(日蓮宗)は国の内外を問わず昔話やお伽話の中で性差がステレオタイプに扱われていると問題提議した。師の説明によると、89年に『アリーテ姫の冒険』が刊行され、主人公のアリーテ姫が王子様の助けを待つことなく、知恵に助けられて自ら困難に打ち勝ったという新しいタイプのヒロイン像が誕生した。時が経過して、ディズニー映画においても、王子様抜きで幸せに暮らす話や、少数民族や外国人のヒロインを文化や歴史に配慮して描くようになり、これからの童話は、同性の両親がいたり、障害のある主人公がいたり、多様性が尊重されるようになると語った。最後に、「矢のはしるのは弓の力、雲の行くことは龍の力、男の仕業は女の力なり」(富木尼御前御書)と女性偏見のない日蓮聖人の御書を披露した。

オーストラリア出身のディーン・慈海・タイラー師(天台宗)は、偏見には観念的なものと、行動によって可視化されるものがあり、三毒により起こると分析。三毒に対する対策は、三善根や六波羅蜜で、阿毗達摩俱舎論のスキルを学べば、偏見を乗り越えられると説明。その行を成し遂げた人として、常不軽菩薩を挙げた。ディーン師自身は「外人だから分からない」「偽坊主」「南蛮坊主」といわれた経験があるが、こうした偏見がなかったら、仏法の有り難さがわからなかったと語った。

4.知らないから恐れ、偏見が生まれる

続いて、国際仏教婦人会側から3人の理事がパネリストとなった。

日比野郁皓師(浄土宗・世界仏教徒連盟国際救援委員長)は、自坊で自閉症の女性の絵画展を開催した。彼岸でもあり約500人が来場したとのこと。師が会場に入る前のゲストに「自閉症の方の絵画です」と一言説明すると、ゲストの顔は曇ってしまったそうだ。ところが、何も知らずに絵画だけ見たゲストは、「パワフルな絵を見て元気になった」とうれしげな様子。師は自閉症を知らないから恐れる、偏見は知らないから起こる、ひとたび別の才能を持った人たちと知ると、彼らと素晴らしい交流ができる、と語った。加えて、極楽往生すると男も女もLGBTも皆菩薩になって、性別を超越した存在になると、お浄土に夢をつないだ。

フランス出身のアルバータ・ラビエ氏は女性偏見とフランスの歴史について語った。フランス革命後、1791年にフランス最初の憲法で「自由、平等、友愛」を掲げたが、1804年にナポレオン法典で、男性が全ての判断をし、家族の主人で、女性は従うだけの存在となってしまった。1944年に女性は選挙権を得て、68年にやっと男性の許可なしに職業を選び銀行口座を持つことができるようになった。そして、85年に男女は家庭内で平等な権利を持つに至った。氏はフランスの女性偏見、つまり先進国の中でフランス女性の地位が意外と高くなかった事実を説明した。

終わりに、筆者はヒンドゥー社会のカーストによる差別に立ち向かったアンベードカル博士について述べた。博士はインド社会でダリット(不可触民)が居場所を見つけるには、改宗するしかないと確信した。宗教がひしめくインドで、博士はなぜ仏教に改宗したのだろうか。それは、仏教が合理性、道徳性、公平性に基づき、カーストがないからだ。56年に博士は平等な立場と扱いが担保される仏教に帰依したのだから、我々は偏見なき平等な仏教を再確認すべきであると提案した。

岡野華蓮氏(理事・孝道教団副統理)が司会進行を、同じくアン佐渡本城氏(理事)がコメンテーターを務め、白熱した議論をまとめた。

シンポジウムの後の清興で、緑川明世師(理事・天台宗)がギターを弾きながら仏教ソングを歌い上げ、会場は美声に包まれた。

総合司会は掬池友絢師(理事・浄土宗)が務め、当会10年間の足跡を明瞭に伝えた。

来場の記念に、冊子『仏教的生き方』(Buddhist Way of Life)が配布された。毎日の生活で何かヒントになることがあれば、幸いである。

10年間の有ること難きご縁に感謝を込めて。

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