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過疎地神社の現状と今後 ― 過疎地寺院問題≪10≫(1/2ページ)

モラロジー研究所研究センター主任研究員 冬月律氏

2019年12月11日
ふゆつき・りつ氏=1979年生まれ。麗澤大卒、國學院大大学院文学研究科博士後期満期退学。國學院大研究開発推進機構研究開発推進センターPD研究員を経て、現在モラロジー研究所研究センター主任研究員、麗澤大外国語学部非常勤講師。専門は宗教社会学、地域研究(国内外)。著書に『過疎地神社の研究』(単著)、『岐路に立つ仏教寺院』(共著)、『宗教とウェルビーイング』(共著)、『人口減少社会と寺院』(共著)など。

筆者が全国の過疎地神社の調査をはじめたのは2007年である。過疎地域に鎮座する神社の現状は、内外的な取り組みによる一定の成果はあるものの、いまだ全国の過疎地神社の大半は、ギリギリの状態での現状維持が精いっぱいといったところでないかと思われる。ただ、感覚的に推測するだけでは、今後の伝統宗教のあり方を考えることにはなり得ない。より詳細な調査が必要なのは言うまでもない。

実態把握しにくい神社神道

本稿では、本紙が連載している「過疎地寺院問題」の番外編で、日本の伝統宗教の担い手として、仏教教団と同様の問題を抱えながらも、実態が把握しにくい神社神道について、現状把握と今後の課題を整理してみたい。

人口減少社会・多死社会に表象される時代において、宗教施設の存廃にかかわる問題は、仏教や諸宗教などに限られているものではなく、神社界においても、もはや傍観できない重要な課題として対応が迫られている。

過疎問題が浮上してきた昭和40年代以降、過疎地域における伝統宗教の存続に関する問題は、当然ながら神社界でも関心事であり、比較的に早い段階から実態調査が行われ、さまざまな対策が講じられてきた。神社本庁という一組織に集約される神社神道は、その運営において、宗派が多数あり地域的偏差も大きい仏教教団に比べると、それほど差異はないとみなされがちである。また、メディアの関心も、仏教教団については主要な教団による大規模な実態調査のデータを取り上げながら、寺院の存廃問題を報じているものが多いのに対し、神社界に関しては神社本庁批判や政治との関係に偏った報道が多い。

筆者は実際のフィールドワークを重ねた結果、過疎地域の神社が抱える問題を「村の祭りの衰退」「神社合併(合祀)問題」「氏子組織の崩壊」(氏子意識の希薄化)、「伝統行事からイベントへの移動」「後継者問題」に分類した。そのことは、筆者が2019年に上梓した『過疎地神社の研究』(北海道大学出版会)や、神社新報社が10年に刊行した『戦後の神社・神道』からも知ることができる。

一方で、実生活のレベルで神社の荒廃について、過疎集落の住民の関心はどうだろうか。国土交通省・総務省が07年に実施した「過疎地域等における集落の状況に関する調査」の結果からは、集落で発生している問題として、伝統的祭事衰退(39・2%)、地域の伝統的生活文化衰退(33・9%)、伝統芸能の衰退(30・7%)といった伝統宗教が担ってきた地域文化の衰退に対する住民の不安が示されていた。

実態調査からみた過疎地神社の現況

神社界における過疎地神社の現状を神社本庁と筆者が行った調査結果から確認しよう。

神社本庁は16年に、神社界では初となる悉皆調査(以下、本庁調査)の結果をまとめた『「神社・神職に関する実態調査」報告書』を刊行した。調査は15年に全国の本務神社の宮司1万310人を対象に実施され、同報告書には過疎地神社の現況のほかに専門家による結果分析も掲載されている。一方で、筆者は12年と15年に高知県の過疎地域一帯を対象にした神社調査と氏子調査を実施している。

以下では本庁調査と筆者による調査結果から3点をあげて過疎地神社の現況を紹介する。

まず、過疎地神社の分布について、本庁調査の結果では「過疎地域である」と回答したのは全体の4割強(43・0%)であった。この数値は、鎮座地が過疎地であるかどうかという回答者の認識によるものではあるが、石井研士氏(國學院大学)の試算による消滅可能性神社の割合41・0%(消滅可能性都市896にある宗教法人)とも符合しており、偶然の結果ではないと考えられる。

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