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第22回「涙骨賞」を募集
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シンポジウム「近代仏教としての禅宗」(1/2ページ)

愛知学院大教授 林淳氏

2020年4月27日 11時20分
はやし・まこと氏=1953年、札幌市生まれ。東京大大学院博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。愛知学院大教授。専門は、近世陰陽道史、近代仏教史。

2月22日に愛知学院大学楠元キャンパスで科学研究費研究会「大学と宗教」と愛知学院大学宗教文化学科共催のシンポジウム「近代仏教としての禅宗」が開催された。時期が時期だけに開催を危ぶむ声はあり、懇親会は中止されたが、本会の方は中川剛マックス氏の司会で予定通りに実施された。

先頭切る浄土真宗

このシンポジウムは、21世紀になって活性化した近代仏教研究の動向を意識して企画されたものである。この領域では、浄土真宗と日蓮主義に関する著作や論考が際立って多い。浄土真宗についていうと、この宗派が近代仏教の先頭を切ってきた歴史的事実によるであろう。政府との交渉で活躍した島地黙雷、教育界に足跡を残した井上円了・村上専精・清澤満之は近代仏教を代表するスターである。他方で日蓮主義には、超国家主義者から平和運動者まで振幅は広く、多士済々である。田中智学、北一輝、宮沢賢治、石原莞爾などの個性派が目立つ。

ところが、それ以外の宗派になると、知名度のあるスターは多くはない。マラソンに喩えると、トップ集団に属す浄土真宗、日蓮主義の存在感やスピードに観客の目は奪われてきたが、第二集団まで届かなかったのではなかろうか。これまでの近代仏教研究は、宗派の偏りがあったことになる。

たとえば浄土宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗、時宗などの近代の歴史を調べようとしても、入門書すらない場合がある。どの宗派も中世史に関しては、山のように研究があるにもかかわらず、近代の手薄さは目を覆うばかりである。藤田和敏氏によると、臨済宗の場合には本山クラスの寺院の史料調査が進んでいないことが、近代を記述することを難しくしているという。藤田氏の指摘はその通りである。しかし本山クラスの寺院の悉皆調査と史料公開を待っているわけにいかない。

第二集団を研究するには、いかなる戦略があるか。一つは、今まで注目されなかった人物を発掘し、スターに仕上げることである(Aタイプ)。もう一つは、宗派間の共通性を探っていくという手法である(Bタイプ)。今回のシンポジウムでは、この二つの戦略が見られた。Aタイプは、ジュリオ・ナシメント氏の大内青巒論、吉永進一氏の忽滑谷快天論である。Bタイプは、藤田和敏氏、川口高風氏の発表、そして私の趣意説明である。つぎに発表概要と、どのような議論があったかを簡単に紹介してみよう。

比較の必要性説く

私の「趣旨」は、宗派間の比較の必要性を説いたものである。僧侶養成、エリートの作り方、内紛の三観点から、宗派間の比較研究を行うことを提案した。

①僧侶養成では、各教団が、文部省、内務省からの法令にどのように対応して僧侶養成の機関をつくったのかを調査すること。②エリートの作り方では、浄土真宗では明治初期に国内・海外の留学制度を設けていたが、曹洞宗、浄土宗などの教団は、四半世紀遅れたことが指摘された。③明治20年代の前後に各宗派では内紛が起こったが、その要因と解決方法について相互比較を行うこと。

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