PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
墨跡つき仏像カレンダー2021
PR
墨跡つき仏像カレンダー2021 第17回「涙骨賞」を募集

宗教学者はオウム事件から何を学んだのか―地下鉄サリン事件から25年⑨(1/2ページ)

上越教育大大学院助教 塚田穂高氏

2020年11月20日 11時03分
つかだ・ほたか氏=1980年、長野市生まれ。東京大大学院博士課程修了。博士(文学)。専門は宗教社会学。著書に『宗教と政治の転轍点』『徹底検証日本の右傾化』(編著)など。

「どうして、あんな男が、こんなところに…!」「あいつのおかげで、○○千万円[オウムに]持っていかれた人だって、知っているんだから」(ジャーナリスト・青沼陽一郎のブログ2014年1月27日)。

こう言って、オウム真理教家族の会(旧・被害者の会)会長の永岡弘行は、「宗教学者」・島田裕巳に激昂して怒鳴った。地下鉄サリン事件からすでに19年近くなる14年1月の東京地裁のロビー。逃亡容疑者3人の逮捕により、再開されたオウム裁判が進行する中での一幕だった。

オウム事件前後に複数の「宗教学者」がオウムを見誤って「擁護」し、醜態を晒したことはよく知られている(いた)だろう。

その後の宗教研究では「カルト問題」研究が櫻井義秀らにより切り拓かれ、オウム研究も宗教情報リサーチセンターの共同研究などによって足場が整えられてきた。

他方、オウム事件の「反省」から、宗教のポジティブな面、「社会貢献」やソーシャル・キャピタルとしての側面への注目も高まった。そして、宗教学者が、そうした活動に取り組む宗教者・宗教団体に「寄り添い」「伴走」しながら研究を進める姿を、学界や専門紙などでも広く見かけるようになった。

そんな中での、市民から詰め寄られる「宗教学者」の姿――。「オウム事件と宗教学者」という問題系は、今日もなお総括されえていないのではないか。いや、そんなのはごく一部の例外の過ぎた話だ、「宗教学者」として一緒にするな、などの声も聞こえてきそうだ。だが、そのように切り離し、閑却することはできないのだ、ということを本稿では述べていく。宗教学者はオウム事件から何を学んだのか、本当に学んだのか、だ。

まずは、あらためてこの問題の内実を振り返る。ここでは既稿に基づき、中沢新一と島田裕巳の例を取り上げる(「メディア報道への宗教情報リテラシー」(平野直子と共著)『〈オウム真理教〉を検証する』所収、15年)。他にも、山折哲雄や池田昭などの問題もあるが、省略せざるをえない。

中沢の言動は、「期待する世界観との親和性・宗教の反社会性の確信」とまとめられる。要するに、オウム・麻原はそもそも中沢の『虹の階梯』などを勉強し、中沢好みに装いを整えて近づいてきたのに、中沢はそれを見て「ここに本物の『狂気』をそなえた宗教がある!」と色めき立った、ということだ。

麻原との対談では、坂本事件について、「麻原 もちろん[関与を]否定します」「中沢 それなら、“弁護士”としても気が楽になりますけどね。…若い連中が、麻原さんの気づかないところでやっちゃったということも、ないですよね(笑い)」「麻原 もちろんですよ」「中沢 管理不行き届きだったりして(笑い)」と話している(『SPA!』1989年12月6日号)。宗教学者で信頼もある自分が正面から対象に問いかければ、「本当の答え」がきっと返ってくる、というのが思い違いだろう。

島田の言動をめぐっては、主に3点を挙げる。

オウム・麻原と知遇を得た島田は、気象大学校の学園祭での講演を、麻原との対談に変更させた(91年11月)。この様子は、教団書籍にも収録され、布教に利用された。この時に島田の声かけで手伝いをした学生は、それがきっかけで家族がオウムの病院に入院させられ、土地・建物を奪われた。

95年1月、すでにサリン製造も疑われていたオウムの第7サティアンへの単独「調査」を認められた島田は、「宗教施設であることはまちがいなかった」と断定した(『宝島30』95年3月号)。それはサリンプラントであり、急きょハリボテなどで宗教施設らしく偽装されたものだった。「教団に好意的な宗教学者の島田さんにでも見にきてもらうか」(杉本繁郎無期囚の2014年の証言)と、招かれたのだ。

「現在のこと」としてのオウム事件―地下鉄サリン事件から25年⑩ 井上順孝氏11月25日

1 何を背後に見るか 首都圏のみならず日本中に衝撃をもたらした地下鉄サリン事件だが、四半世紀が過ぎれば、人によっては遠いかすかな記憶であり、あるいは生まれる前の話で実感の…

最初期仏教とオウムを相対比較―地下鉄サリン事件から25年⑧ 佐々木閑氏11月6日

オウム真理教(以下「オウム」と略称)と仏教を比較するための方法を一つ、提示したいと思う。オウム真理教は、単独の宗教団体だということになっているが、教えの基本に仏教があり、…

荒行堂という修行現場を通して―地下鉄サリン事件から25年⑦ 戸田日晨氏10月27日

(1)行堂改革と重なり合うオウム問題 オウム真理教事件について私が述べられることには限りがありますが、「荒行堂」という日蓮宗の僧の修行道場において、行僧時代から現在の「傳…

第17回「涙骨賞」を募集
PR

対話の前提 キリスト教的伝統との差異

社説11月27日

家族の絆 古くて新しい檀家の課題

社説11月25日

過疎地寺院問題 コロナで対策は前倒しに

社説11月20日
お知らせ
このエントリーをはてなブックマークに追加