PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
第21回涙骨賞募集 2024宗教文化講座

顕本法華宗の日蓮聖人御降誕800年慶讃事業の意義(1/2ページ)

立正大名誉教授 中尾堯氏

2021年5月27日 09時21分
なかお・たかし氏=僧名は堯文。1931年、広島県生まれ。立正大大学院修士課程を修了し、東京教育大・文学博士。法政大・慶応義塾大等に出講し、日本古文書学会会長・文化庁文化財保護審議会専門委員等を務める。日蓮宗勧学院勧学職・宗宝霊跡審議会副委員長・身延山文化財調査研究委員長。編著書に『日蓮真蹟遺文と寺院文書』『日蓮聖人と法華の至宝』等。日蓮宗新聞に「ご真蹟に触れる」、『法華』に「古文書を見つけた話」を連載中。

顕本法華宗総本山の京都妙満寺では、5月22・23日の両日にわたって、日蓮聖人御降誕800年の慶讃大法要が営まれる。この法要にあたり、令和の修復が終わった宗門の至宝、日蓮聖人御真蹟「天目授与曼荼羅本尊」の開眼が厳修される。あわせて、記念事業の一環として完成した『顕本法華宗御本尊集』『顕本法華宗史料集』が奉献される。宗門にとって誠に意義深い慶讃法要として、宗門をあげてその日が待たれている。

修復を終えた日蓮聖人の真蹟曼荼羅本尊は、京都市岩倉の総本山妙満寺に奉安する、顕本法華宗第一の霊宝である。甲斐国身延に入山間もない日蓮聖人が、1274(文永11)年6月に草庵で最初に揮毫された曼荼羅本尊で、弟子の天目に与えられた。この曼荼羅本尊の修理にあたり幾つかの特色が確認され、日蓮聖人が礼拝のために揮毫された「佐渡始顕曼荼羅本尊」と、内容と外観ともにほぼ同じ形式であったことが注目されている。

「天目授与曼荼羅本尊」は、「南無妙法蓮華経」の題目を中心に、釈迦・多宝の二仏に四菩薩をはじめ諸尊を配置し、尊名に「南無」を冠した「総帰命」の形式である。揮毫に用いられた生地は、幅78・7㌢に縦165・8㌢の絹地で、絹本の真蹟曼荼羅本尊としてはただこの1幅のみが現存し、他はすべて紙本である。修理にあたって表装を解くと、その絹地には縦の折皺が多くみられ、長期間にわたり仏壇に掲げられていたと推測される。

この曼荼羅本尊を前にして想起されるのは、佐渡に配流されていた日蓮聖人が、1273(文永10)年7月8日に書き顕わされた「佐渡始顕曼荼羅本尊」である。後に身延山に移されて久遠寺に伝来していたが、1875(明治8)年の身延山大火によって焼失して現存しない。日亨上人の『御本尊鑑』の記事によると、幅1尺6寸1分(77・3㌢)に長5尺8寸2分(165・1㌢)の絹地に揮毫された、総帰命式の堂々とした曼荼羅本尊である。妙満寺の「天目授与御真蹟曼荼羅本尊」は、この「佐渡始顕曼荼羅本尊」と同じ形で、身延ご入山後の最初に染筆された由緒深い曼荼羅本尊である。絹地に印された細かな縦皺は、身延山の仏堂に掲げられていた痕跡ともみられる。

妙満寺では、天目授与の曼荼羅本尊を丁重に護り、日蓮聖人御降誕800年の記念事業として修理の計画が立てられた。幸い、妙満寺の伽藍に近い土地に、国宝をはじめ文化財修理の経験豊かな藤岡光影堂が工房を構え、長期間にわたる日蓮聖人御真蹟修理の実績をもとに、修理を担当し進めることができた。もとの軸の中には、1613(慶長18)年と1710(宝永7)年の修理記録があり、これまで御真蹟の護持に心を尽くした様子が窺える。この度の修理事業によって、国宝と同等の修理が達成され、御降誕800年の大会に開眼供養をあげるに至り、護持の伝統に一時期を画す「令和修理」である。

顕本法華宗では、日蓮聖人御降誕800年を期して「顕本史料調査委員会」を組織し、6年間にわたり各寺院に所蔵する寺宝の調査を進めてきた。若手の住職・教師が委員長のもとに力をあわせ、私が顧問の形でこれに加わり、全国の末寺を訪れて寺宝をくわしく調査した。調査員は、自坊の務めがあるなか、幾日もの調査旅行は苦労なことであったが、計画は確実に実行され成果を上げた。これらの史料を集大成して寺宝の一覧を作成し、一々にその写真をつけて寺院ごとに編集し、『顕本法華宗御本尊集』と『顕本法華宗史料集』の2部に編成しなおして、日蓮聖人御降誕800年記念として刊行された。

宗教法人法をどう理解するか 田近肇氏7月22日

2022年7月の安倍元首相の殺害事件の後、旧統一教会の問題に関連して、違法な行為をしている宗教法人に対して所轄庁は積極的に権限を行使すべきだとか、さらには宗教法人法を改正…

災害時・地域防災での寺院の役割 ―大阪・願生寺の取り組みからの示唆 北村敏泰氏7月8日

要医療的ケア者向け一時避難所など地域防災に寺院を活用する取り組みを継続している大阪市住吉区の浄土宗願生寺(大河内大博住職)で先頃、大規模地震を想定した避難所設営の図上演習…

公的領域における宗教 ― 他界的価値と社会的合法性 津城匡徹(寛文)氏6月27日

「合法性」という規範 今年5月31日付で、単著『宗教と合法性――社会的なものから他界的なものまで』を刊行した。同書は、宗教がらみの非合法な行為を主対象としたものではないが…

漂流ポスト寺で継承 故人への思い受け止め(7月24日付)

社説7月26日

孤立出産女性への支え まず事情を聴くことから(7月19日付)

社説7月24日

SNSがもたらす錯覚 信頼する情報の見分け方(7月17日付)

社説7月19日
このエントリーをはてなブックマークに追加