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古代チベット、貨幣の萌芽期(1/2ページ)

インド・ニンマカレッジ客員教授、浄土宗高徳寺住職 矢田修真氏

2022年10月21日 13時59分
やだ・しゅうしん氏=1942年生まれ。東北大文学部(印度学仏教史専攻)卒。チベット文化研究所理事などを歴任。浄土宗高徳寺(東京都港区)住職。同寺発行の『仏教通信』などでチベット文化普及に努めている。

中華民族の大家族の中で、チベット民族は悠久の歴史を持っている。古くは旧石器時代、すでにチベット高原には人類の活動があった。新石器時代の文化遺産、特に昌都文化遺跡と拉薩曲貢文化遺跡は、農業と牧畜業が分業されていたことを証明している。この分業により、物々交換の条件が作られた。

チベット高原で金石併用時代に入った時期、私有財産が生まれ、物々交換が促進された。同時に多くの部族が徐々に形成され、部落連盟も出現した。敦煌文献とチベット語の歴史書によると、44の小王国と、プギェル、娘苦、羊同、工域など12の小国があった。チベット全域を統一したプギェルを例に、チベット古代の経済発展と貨幣使用の過程をたどってみたい。

農牧畜業発展、手工業も

プギェルはもともと山南地域の一部族で、ヤルン川流域の首領となりオデ・プギェルと呼ばれた。『西蔵王統記』によると、初代ツェンポ(国王)のニャティから第7代ティグムにかけての時期に、母系民族社会から父系氏族社会に移行し、比較的発展した農業と牧畜業を有した。

歴史書『賢者喜宴』第7章には、第8代プデ・グンゲルの時代、すでに「木を燃やして炭を作り、鉱石を精錬して金、銀、銅、鉄を作り、また木を削って穴を作り、犂とくびきを作って土地を開墾し、水を引いて灌漑し」ていたとある。

第31代タクリ・ニェンスィクの時代には、3分の2の小国を支配下に置き、経済が発展し手工業も誕生している。「この時に一升枡を使い始め、はかりを作り、穀物や油の重さを測り、売り手と買い手がお互いに納得できる額を交渉した。それ以前は、チベットには貿易基準である一升枡と秤はなかった」と記載されている。

この時代に物品の価値を測る尺度としての交換物品、いわゆる一般等価物が生まれたことが見て取れる。この段階で使用されていた一般等価物は、家畜、バター、クルミ、青梅、岩塩、貝殻、毛織物、砂金など、一つにとどまらない。

商品交換の発展に伴い、一般等価物は特定の種類に固定されていく。品質が均一で、分割や結合がしやすく、持ち運びや保管が容易で、長期にわたり質が変わらず、量は少なく価値が大きいという特質を有するもの。人々はこうした利点を砂金が完備していることに気付き常用の一般等価物とした。砂金がチベットで最も早い時期の通貨の一つとなったのである。

最上級は金、次いで銀

7世紀、ソンツェン・ガンポはチベット高原を統一した後、奴隷制度を持つ吐蕃王朝を開いた。そして経済発展の新たな需要を満たすため、度量衡を統一する法令を発布した。「身分の高い者は法律で束縛されるべきであり、貧困層は合理的な制度の対象となるべきであり、度量衡を定め、偽りの度量衡を使用してはいけない」とした(『西蔵王統記』)。『賢者喜宴』にはソンツェン・ガンポが、升・両・合・勺・銭・分・厘・毫などの度量衡を第二の法としたとの記載がある。

吐蕃王朝の初期には、金が最上級の金属とされた。唐の体系を学び、役人に位階を授ける文書「告身」は、一番上の者は金と玉、次の者には銀とタメン(金メッキした銀、銀で象嵌されたメノウ等)、次の者には銅と鉄の文字の告身を与えたと、『賢者喜宴』にある。吐蕃王朝の時代には早くも、銀の価値が金に次ぐとされていたことが分かる。中国の歴史書『新唐書・吐蕃伝』にも、「吐蕃の宮殿の章飾の最上級は瑟瑟(おそらくトルコ石かヒスイ)で、金、鍍金された銀、銀がこれに続き、一番下は銅まであり、臣の大小を表し、腕に着けて身分の上下を区別した」と記載される。

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