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第22回「涙骨賞」を募集
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法華コモンズのめざすもの(2/2ページ)

東洋大名誉教授・法華コモンズ仏教学林理事長 西山茂氏

2025年5月7日 09時22分
2.日蓮仏教と法華コモンズがめざすもの―「不軽精神」による仏国づくり―

近代において、宗教そして社会主義や共産主義が究極的に目指した共通のものとは、「理想の共同体」だろう。この理想の共同体は、古い共同体的拘束に束縛されない「自由な個人」によって構想されてきた。この「自由な個人」とは、近代の資本主義体制下で育まれてきた個人にほかならない。

しかし、今こうした理想の共同体を構想して実現するためには、よほど練達した「個人」(人間)の集まりが必要となるだろう。そして、その理想の実現に必要とされる宗教的規範として、通仏教の「慈悲心」、最澄の「忘己利他」の心、特には法華経や日蓮の「不軽精神」があげられる。

「不軽精神」についていえば、日蓮遺文には「一代の肝心は法華経、法華経の修行の肝心は不軽品にてそうろうなり。不軽菩薩の人を敬いしはいかなる事ぞ。教主釈尊の出世の本懐は人の振舞にてそうらいけるぞ」(『崇峻天皇御書』)とある。

また、本門佛立宗を開いた長松日扇がのこした教歌のひとつに、「義は強く言やはらかに身を下る これぞ不軽の折伏と知れ」という言葉がある。

迫害の瓦石が飛ぶ中での不軽菩薩の「汝を深く敬う」姿は、戦後80年を迎える日本の国民と国家の進むべき道を、いま現在も示している。これを、故・望月哲也(元立正大学教授)は、「常不軽国家日本の建設」と言っていた。

3.四菩薩プロジェクトの実践を通して

最後に、筆者が考える日蓮仏教徒と「法華コモンズ仏教学林」関係者がめざすべき「理想の共同体」づくりのための「四菩薩プロジェクト」を紹介したい。

「四菩薩プロジェクト」とは、筆者が「本化ネットワーク研究会」(法華コモンズ仏教学林の前身)の指針として最初に示したもので、筆者は2008年に開かれた日蓮宗の第41回中央教化研究会議の基調講演で、この構想を語っている。それによれば、その内容は、あらまし次のようなものであった。

周知のように、法華経の予言では、上行・無辺行・浄行・安立行の四菩薩が仏滅後の末法に現れて、濁悪の世を救うという。「四菩薩プロジェクト」も、その予言に由来している。

その四菩薩のうち、上行菩薩がすべての行を代表している(=総行)が、これを各別して考えると、その役割を分担した四つの菩薩行(=別行)と考えることもできる。以下に、社会的活動の諸分野と絡めて、四つの別行の分担を簡単に紹介しておこう。

〇上行プロジェクトは、「立正安国の行」で、「正義、公平、平和、自由」の分野での菩薩行である。

〇無辺行プロジェクトは、「究理潤世」の行で、「教学、現代思想、科学技術、社会科学」の分野での菩薩行である。

〇浄行プロジェクトは、「洗心浄土(心身と環境の清浄化)」の行で、「現代青年のアパシーやフラストレーションの問題や地球温暖化や環境悪化」の分野での菩薩行である。

〇安立行プロジェクトは、「同悲同苦・抜苦与楽の行」で、「福祉・保健医療・飢餓救済等」の分野での菩薩行のプロジェクトである。

法華コモンズ仏教学林は、この四つの菩薩行の中では「無辺行プロジェクト」の実践活動であり、主には講座の開催・運営となるが、他の三つのプロジェクト活動の立ち上げと理論的な研鑽を行う場でもある。当然ながら、四つの菩薩行が互いに関連して連動することで、日蓮仏教の再歴史化が達成される。

最近の講座では、御遺文の真偽問題や中世史学からの日蓮像の見直し、また現代思想としての日蓮仏教の再考などが開講されて、諸先生の協力を得ながら広く門戸を開いての学びを続けている。この10年間の軌跡は、公式ブログ「https://hokke-commons.jp/」で見ることができるので、ぜひご覧頂きたい。

この4月から新たな前期講座が開始するが、日蓮仏教の再歴史化を念頭に置きながら、皆と共に法華コモンズのめざすものに少しでも近づければと思う。

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