蓮がつないでいった縁 要望に応えお寺を開く
川崎市高津区・浄土宗大蓮寺 大橋雄人住職
浄土宗大蓮寺(川崎市高津区)の大橋雄人住職(41)は「お檀家さんだけでなく地域の方々のための場所でありたい」との思いで地域に開かれた寺院を目指している。
当初は寺を継ぐ予定はなかったが、副住職だった叔父と先代住職の祖父とが相次いで亡くなったことから、2013年に31歳で住職に就任した。ただその直後は、大学の非常勤講師や浄土宗総合研究所の研究員などを務めながら、全日本仏教青年会や全国浄土宗青年会の事務局などの仕事も任され始めた時期でもあり、理想はあってもなかなか思うように動くことができなかった。
転機となったのは、寺の名前にもある蓮の花だった。境内の鉢で育てていたところ、見事に咲く蓮の花を見掛けた寺の目前にある洗足学園音楽大の関係者から株分けを求められた。そこから地域交流のために開くコンサートの会場を学外で探しているとの相談を受け、快諾。17年の花まつりに合わせて本堂をコンサート会場として提供したことから次々と縁がつながっていった。
同寺で花まつりを催したのは数十年ぶりだった。そこで、コンサートの来場者に「お寺で何かやりたいことはありますか」とアンケートを取ったところ、「寺ヨガをやりたい」と手を挙げた人がいた。こうした出来事をきっかけに、会館や本堂、客殿などのスペースを地域住民の要望に合わせて開放しようと決めた。
今では、仏像彫刻教室やヨガ教室、社会人落語会など各種ワークショップが定期的に行われている。大橋住職も寺のSNSを活用して積極的に告知に協力。ワークショップの講師は「お寺という落ち着いた雰囲気の場所で作業に取り組むことができ、参加者にも喜んでもらえている」と話す。
ここ数年の花まつりでは、大橋住職の企画で近隣の他宗を含む4カ寺でのスタンプラリーを実施している。30分ほどで回りきることができ、全てのスタンプを集めると腕輪念珠などの記念品がもらえるとあって子どもらにも好評。今年は3日間で約千人が達成した。「毎年着実に参加者が増えており、地域のイベントとしてなじんできたことを実感している」と感慨深げに語った。
今後は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で休止していた仏教文化講座の再開や、檀信徒とのコミュニケーションと情報発信のために始めた寺報の発行にも注力したい考えだ。
(佐藤慎太郎)