伽藍復興に向け拝観開始 7㍍本尊の造立目指す
岡山市北区・天台宗金山寺 岸本賢信住職
2012年12月24日未明、1300年に及ぶ歴史を有する天台宗金山寺(岡山市北区)の本堂(国重要文化財、当時)と本尊千手観音像が焼失した。住職は急逝し、寺の復興を託されたのが、在家出身で当時、毘沙門堂門跡(京都市山科区)で修行していた岸本賢信住職(39)だった。
師僧の叡南覚範探題(7月26日死去)の意向を受けて翌年に着任。建物や境内の維持管理のために奔走し、昨年ようやく山門(岡山市指定重要文化財)の修復工事にこぎ着けた。クラウドファンディングを利用した仁王像の修復工事も年度内に始まる。
金山寺は、孝謙天皇の勅願で報恩大師が749年に開いた。平安時代末期には臨済宗の開祖・栄西禅師が住職を務め、天台密教葉上流の灌頂を行ったと伝わる。戦国時代には宇喜多直家、江戸時代には池田藩の保護を受けたが近年は荒廃し、岸本住職が入寺した当初は山門や客殿の老朽化が著しかった。仮本堂は2014年に建築し、最小限の行事・運営はできるようにした。
岸本住職は「着任後、設備の維持管理から行った。雨漏りが激しく倒壊の危険もあった山門に加えて、1660年に良尚法親王が奉安した扁額を修理している。仁王像の後は、築300年超の客殿を文化財に指定していただいた上で補助金を活用しながら修復したい」と話す。「初詣の護摩祈願に力を入れており、復興資金として浄財を積み立てている」という。
2021年に寺務員を雇用して客殿の拝観事業を開始した。「宗教施設なので仏さんに休みはない。いつでも受け入れられる態勢を整えた」とし、午前10時から午後5時まで、内仏殿や書院を含めて公開している(大人500円)。
「まずはできることから」と語る岸本住職が目標とする夢は、新しい本尊千手観音の造立だ。護摩堂手前にある樹齢200年のヒノキを使い、平安時代古式の立木工法で「約7㍍の大千手観音像を造立する」。野外で根つき一本彫りを行い、広く参拝者に見学してもらいながら造立する壮大な計画になる見込みだ。
実現はまだ先になりそうだが、浄財は着実に集まっている。岸本住職は「何もしなかったら何もできない。多くの人に関わってもらえる仕組みを作り、社会性・話題性のある形で寄付・勧進を募っていく。そうした努力を今後も続けたい」と訴える。
(須藤久貴)