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ライシテをめぐる議論 旧統一教会、日本会議も視野に

東京大教授 伊達聖伸氏

時事評論2023年7月19日 09時42分

長引くコロナ禍で閉ざされてきた研究者の対面での国際交流の機会が増えてきた。私も、6月9日と10日にカナダ・シェーブルック大学で行われたシンポジウムと、7月4日から7日まで台湾・中央研究院で開催された国際宗教社会学会(ISSR)に参加してきた。前者は「社会・法・宗教」研究センター(SoDRUS)開設20周年記念シンポで「見えないところにあるライシテ」がテーマ、後者は「対話のなかの諸宗教」を全体タイトルとする一大国際大会で性格が異なるが、後者で私が参加したセッションは「緊張下のライシテ」なので関係がある。

SoDRUSのシンポの立役者はダヴィッド・クサンスで、ケベック州のライシテの専門家。シンポの基調講演をしたのは、メキシコとラテンアメリカのライシテを研究しているロベルト・ブランカルテ。木を見て森を見ずと言うが、ブランカルテはライシテをフランス独自のものと考えることが、ライシテの森の広がりを見ることを妨げる木になっていると論じた。シェーブルック大学とストラスブール大学からの参加者には法学者が多く、ライシテ研究においては宗教社会学的なアプローチと分業的な協力関係にあることが読み取れた。ジェンダーや性的マイノリティについての発表もあった。

私自身は、日本をライシテの観点から語る試みがそのまま「見えないところにあるライシテ」の提示になると考え、日本にはいかなる(無)意識的なライシテがあると言えるかを、政教関係の来歴や無宗教の問題を取りあげて論じた。イタリア、ベルギーの研究者と同じセッションで、フランスとケベックのライシテを相対化する役割を担った。

ISSRのセッションもクサンスの肝煎りで、彼とブランカルテと私の3人が共同組織者となり、三つのセッションで9人が発表した。左派的な理念のもとで生成してきたライシテが、近年では右派的な立場から回収されるようになっているのではないかというのが基本的な問題意識だった。また、ライシテの脱フランス化をはかることも狙っていた。

台湾での学会開催ということもあってか、台湾、ベトナム、チベット、中国、日本など、東アジアをフィールドとする発表が多かった。聴衆からも、政教分離の比較と言えばこれまで米仏を軸とするものが大部分だったが、ラ米とアジアを含めて考察することで広がりが出ていると評価され、我が意を得たりと思った。

私自身は、日本では表向きは政教分離になっているが、舞台裏では政治と宗教の依存関係が見られることを、統一教会や日本会議に言及しながら論じた。日本人研究者では、民博の奈良雅史が中国の回族について、東大大学院の田中浩喜が沖縄孔子廟訴訟について発表した。東アジアのライシテを考えるには、中国文明の遺産をどう受け止めるかがひとつのポイントになるだろう。

対面国際集会には、やはりオンラインでは味わえない醍醐味がある。聴衆の反応から内容の手応えもわかるし、旅先ならではの認識のはたらきもある。休憩中や会食での公私に渡る四方山話から得られる研究のヒントや新しい交流の広がりも楽しみである。

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