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関東大震災 100年前の教訓 地域、宗教者らの連携必要

大阪大学教授 稲場圭信氏

時事評論2023年9月13日 09時56分

死者・行方不明者合わせて10万人以上が亡くなった関東大震災から100年。首都を襲った巨大地震によって多くの家屋が倒壊し、大規模火災は市街地を焼き尽くした。土砂災害も発生している。そして伊豆大島や静岡県では津波が家屋を破壊した。全壊・全焼家住家は29万棟にものぼった。この100年前の教訓は今の私たちに生かされているのだろうか。

文豪が残した記録がある。芥川龍之介は「家大いに動き、歩行甚だ自由ならず」と書き残し、室生犀星は東京から脱出しようと赤羽駅に向かったが多くの人で汽車に乗れず、ある民家が一時滞在を申し出てくれたと体験を記している(朝日新聞、2023年9月1日)。建物の耐震化と防火対策の重要性は言うまでもなく、被災者を受け入れる共助の取り組みも大事だと気付かされる。

宗教界の動きはどうであったか。寺院273、神道11、キリスト教1の施設で計1万8319人の被災者を受け入れたと当時の宗務局の調査報告がある(中外日報2023年9月1日付)。当時の中外日報の紙面(1923年12月11日付)は、天理教や金光教の食料提供や収容施設提供などの救護活動を報じている。

関東大震災から100年がたった。当時と今では社会も制度も異なる。しかし、災害時に命を守り、支え合っていくことの大事は変わらない。その時代にあった災害対応が必要だ。1959年伊勢湾台風を契機として1961年に災害対策基本法が制定された。同法には、政府の責務に加えて、市民の自主性の尊重、地域の取り組みも明記されている。2013年改正においては、東日本大震災から得られた教訓を生かすために指定緊急避難場所および指定避難所が規定された。

大阪大学と一般社団法人地域情報共創センターが運営する未来共生災害救援マップ(略称 災救マップ)には、全国の指定緊急避難場所、指定避難所、宗教施設のデータを登録している。9月1日現在のそのデータによると、東京都内では215の宗教施設が指定緊急避難場所や一時集合場所になっていたり、帰宅困難者受け入れなどの協力をしたりすることになっている。そのうちわけは、神社130、寺院67、キリスト教4、その他の宗教14施設である。同データによると、全国では自治体と何らかの災害時協力関係がある宗教施設は4400を超える。

令和の時代、残念ながら首都直下巨大地震や南海トラフ巨大地震が発生する可能性は高い。その今、全国で避難所が不足しているという実態がある。私たちは自分の命を他人任せにして大丈夫なのか。全てを自治体任せにするのではなく、私たち一人一人の意識改革や取り組みも大事だ。自分の住んでいる地域をよく知って、地域の皆で地域防災を考える必要がある。「調査をしたら、大災害発生時に市職員の3割が役所に来られないと分かった」。ある市長の言葉だ。大災害時には自治体職員も被災したり、道路が寸断されたりして避難所まで行くことができないという事態を想定しての備え、地域の施設、宗教者、防災士、自主防災組織、自治会町内会などの連携の仕組みも必要だ。

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