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日本のカルト問題 ― 被害防止へ宗教者の役割大切(1/2ページ)

浄土真宗本願寺派布教使、日本脱カルト協会カウンセリング部会員
棚原正智氏

2014年8月8日
たなはら・しょうち氏=1961年、兵庫県生まれ。中央仏教学院研究科卒、本願寺派布教使。同和教育振興会部会員、日本脱カルト協会カウンセリング部会員。著作に『憲法九条は仏の願い』(共著)、「ハンセン病差別から見えるもの」(同和教育論究23号)など。
【あるお参りにて】

随分前に、何度もお参りに行ったことがあり、世間話の間に仏教の話や真宗のお話などをしていたつもりでいた家で、お勤めをしながら、ふと仏壇の隅に、ある新々宗教のご本尊の写真があるのに気がつきました。お勤めが終わり、この写真って〇〇〇のご本尊ですよねぇと、家の人に伝えた時、「よくご存知ですねぇ」とニヤッとされた様子は忘れられない出来事でした。以前から私がお参りに行く時は事前に分かっているので、その時だけご本尊の写真を隠しておられたようです。

私のお参りは、儀礼であったり親類縁者へのポーズでしか無かったのでしょう。その後色々と話し合いましたが、今もって平行線というのが実情です。

【他宗教(団体)を一括りに否定するだけで良いのか】

仏教以外の宗教の教義体系については、まったく分からないので、仏教のことしか書けないのですが、日本仏教にはおよそどの宗派にも、教相判釈というものが存在します。代表的な五時八教であったり、私が所属する浄土真宗では、二双四重判や真仮偽判などがあります。この教判論は宗派の教えを確立する上では当然のものかもしれません。しかし、真・仮・偽判で言う所の偽とされた教えを説く団体に対する見方はあまりにも画一的ではないでしょうか。偽とされた団体の中には、偽というよりは「危」と表現する方が良いのではと思うことがしばしばあります。真・仮・偽・危判などという新しい教判論を作るとそれこそ一宗建てることになりますので、これまでにしますが、自分が所属する教団以外の宗教(団体)を、一括りに否定するだけで良いでしょうか。世の中には、色々な団体があります。その中にカルトと言われる団体も存在します。

では、カルトとはどういう団体なのでしょうか。これは残念ながら、明確な定義がある訳ではありません。学者によって幾つかの定義が存在します。フランス国民議会が1995年に幾つかの定義を示しましたが、それにしたところで、日本にそのまま持って来て当てはまるのかと言うと疑問があります。

私自身は「カルトとは、ある人物あるいは組織の教えに絶対的な価値を置き、現代社会が共有する価値観―財産・教育・結婚・知る権利などの基本的な人権や家族の信頼関係といった道徳観を否定する集団である」(85年・カリフォルニア大学)というぐらいの定義の方がイメージとして捉えやすいと考えています。ここで言えるのは、カルト団体はなにも宗教団体だけではないということです。商業カルトと呼ばれるもの、心理カルトと呼ばれるものなど、形態は多様であると認識しなければなりません。勧誘のターゲットは、さまざまな年齢層に及びます。

【伝統教団の対応】

宗教を取り巻く現状は、決して良い状態であるとは言えないでしょう。いわゆる宗教離れと一言では言い切れない問題に対して、各教団や宗教者個人個人が色々な取り組みを進めておられます。

そのような中で信者の方が他の宗教へ移ってしまうという相談がきっかけで、カルトへの対策を講じておられる教団があります。また、若い人に布教伝道を行うことや、若者の悩みの相談をきっかけに、カルトへの対策を講じておられる教団もあります。いずれの教団も啓発だけではなく、相談にも乗っておられます。ただこのような教団は大変珍しいと言えます。

私が所属する浄土真宗本願寺派(西本願寺)では、宗門系の学校法人グループである龍谷総合学園から、「学園生活を後悔しないために・カルト勧誘にご注意を」というパンフレットが作成されました。それは今まで何も無かったことから考えると大きな一歩かもしれませんが、そのパンフレットには、相談窓口として龍谷総合学園の電話番号も本願寺教団の電話番号も書かれていません。その代わりに、全国霊感商法対策弁護士連絡会と国民生活センターの電話番号が記載されています。これはあまりにも無責任ではないでしょうか。実際に教団に電話をかけても対応する部署が無いので書けないという論がそもそもあるのですが、パンフレットを作るのであれば、その後の相談をどのようにするのかということも作る側の責任ではないのかと思います。

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