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過疎地域における女性仏教者の活動 ― 過疎地寺院問題≪6≫(1/2ページ)

龍谷大准教授 猪瀬優理氏

2019年11月8日
いのせ・ゆり氏=1974年、札幌市生まれ。北海道大大学院文学研究科博士課程修了。龍谷大社会学部准教授。専門領域は宗教社会学。著書に『信仰はどのように継承されるか―創価学会にみる次世代育成』(北海道大学出版会)など。

どのような場所であっても、そこに人がいるのであればその土地にはその人たちの暮らしがある。本連載のテーマである「過疎地」「寺院」も同様である。

過疎地域にある寺院の問題については、近年出版されている櫻井義秀・川又俊則編『人口減少社会と寺院』(2016年、法藏館)や相澤秀生・川又俊則編著『岐路に立つ仏教寺院』(19年、法藏館)など、各宗派の宗勢調査や宗教研究者の調査に基づいた研究報告も出されている。共通した問題認識としては、鵜飼秀徳著『寺院消滅』(15年、日経BP社)に代表される「消滅あるいは消滅しつつある寺院の実態と地域社会の現状」の指摘である。寺院の運営と存続は総体的に危機的状況にある。

しかし、そのような厳しい状況にあってもその場所に住み続ける人にとっては、暮らしの場である。さまざまな思いや事情の中で、なんとか自分たちが暮らす場所をより良くしたい、と日々を過ごしている。

そのような気持ちが形となって現れた活動の一端として、先述の『人口減少社会と寺院』および大谷栄一編『ともに生きる仏教』(19年、ちくま新書)において、仏教徒女性たちを中心に四半世紀以上にわたって営まれてきた「広島県北仏婦ビハーラ活動の会」の活動を紹介させていただいた。病院ボランティアという地道な活動は「目に見える形で」地域の人口増加や寺院活動の活性化を促進させるわけではない。だが、寺院にかかわりを持つ女性たちが主役となって、寺院ネットワークを基盤として「地域のために」「人々のために」働いていることにより、この活動は広く地域の人たちに仏教の教えを「目に見える形で」示すことを可能にしている。

その場が「過疎地」であれ、「寺院」であれ、人がいるから「問題」が生じるのであるが、人がいるから「何かしたい」「何かできる」という思いも行動も生まれてくる。それを形にしてあらわしていくことが、その場所での暮らしが継続していくことに不可欠なものとなるだろう。

今回は、そのような思いを形にした一つの例として、福井市赤坂町の浄土真宗本願寺派寺院・光照寺で行われている活動を紹介したい。

赤坂町は、越前海岸沿いにある集落で、丹生山地の西部、標高220メートルの海岸段丘上にある。06年2月に福井市へ編入されるまでは、福井県の市町村のなかでも面積最小、人口最少であった越廼村に属した地域である。越廼村の戦後の人口は昭和20年代の一時期を除いて一貫して減少し、特に若年層の減少が著しかった。山間に位置する地域はさらに減少率が高く、赤坂町も同様であった。明治5(1872)年には戸数18戸、人口103人を数えた地域も、昭和61(1986)年の時点では6戸13人となっており、筆者が当地をはじめて訪れた平成27(2015)年時点では2戸3人で、全員が80歳代以上であった。

赤坂町にある光照寺の周辺には年間1万人が訪れるキャンプ場や別荘地はあるものの、50年以上前から廃寺になる寺だといわれていた。前住職も自分の後は代務を置き、その先は廃寺かとの考えを持っていたらしい。しかし、前住職の義妹である上田慧恭師が後継となった。

上田師の実家は寺院であり、姉3人は寺院に嫁いだが、自身は日蓮宗の在家に嫁いだ。その後、ある住職の勧めによって平成5(1993)年、浄土真宗本願寺派の中央仏教学院通信教育で学び、翌年教師資格を修得。とはいえ、寺院継承する気は全くなかった。

光照寺を継承することを打診された際、周囲からは「いまさら重荷を背負うのか」「寺院は世間の目があるから大変だ」「経済的には成り立つのか」などと、否定的意見が多く、自身も同感であったため、一度は無理と判断。ところが光照寺の親戚2人が鯖江まで行き、夫に住職の件を頼むと「快諾」の返事(これには上田師も唖然としたとのこと)。また、地元総代と寺の隣の住民が御堂の阿弥陀様の前で両手をつき深々と頭を下げられた。地元に住む人たちの「お寺を守る」との使命感も十分に解っていたため、降参して継承を承諾。平成18(2006)年、住職を任命される。上田師、御年65歳の出来事である。

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