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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

四国遍路道の変遷(1/2ページ)

巡礼遍路研究会会長・性善寺住職 柴谷宗叔氏

2022年9月20日 09時29分
しばたに・そうしゅく氏=1954年、大阪市生まれ。早稲田大文学部卒、高野山大大学院博士課程修了。博士(密教学)。読売新聞記者を経て、高野山大密教文化研究所研究員、巡礼遍路研究会会長、四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクトを支援する会副会長、性善寺(単立)住職、高野山真言宗大鳥寺住職。著書に『江戸初期の四国遍路』(法藏館)、『四国遍路こころの旅路』(慶友社)など。

四国八十八ヶ所を巡る遍路道。徳島県鳴門市の1番霊山寺から、時計回りに高知、愛媛を経て、香川県さぬき市の88番大窪寺まで、1周約1200㌔。もっともこれは歩き遍路の場合であって、車は山道や細い道を通れないので、回り道をするため1400㌔ぐらいだとされている。

遍路道とはお遍路さんの通る道である。開創1200年の2014年には年間50万人もの参拝者があったとされるが、20年の新型コロナ感染拡大以降は落ち込んでいる。とはいえ、十万単位の人々が訪れている霊地であることには変わりない。拠点となる札所や仏具店では、案内地図が販売され、お遍路さんはこれを頼りに次の札所へと向かう。

今、多くの徒歩遍路が使っているのは、へんろみち保存協力会編『四国遍路ひとり歩き同行二人』という、地図である。主要ルートを赤線で示し、その道沿いにはシールや立札を設置し、遍路を導いてくれる。一部複数のルートがあるところは、それらも記されている。宿泊情報も掲載されているので、徒歩遍路のバイブルのようになっている書物である。使ってみると確かにわかり易く便利である。私も徒歩遍路を志す方々に推薦している書物だ。

ところが、ここに示された道を絶対の正しい道だと信じて、一歩たりとも外れないようにたどっている人が意外に多いのに驚いた。この地図は1990年の創刊で、同協力会を主宰していた故宮崎建樹氏が、自分で歩いて当時歩き易かったルートを示したもので(以下、宮崎地図とする)、必ずしも歴史的な古道を示しているのではないということだ。たとえば、高知県安芸市から南国市に至る道で、自転車道に赤線がひかれているが、これは土佐電鉄の廃線跡で、昭和時代には鉄道が走っていたので、人の歩く道ではありえない。本来の道は国道55号線旧道である。

同協力会とは別に行政が「四国のみち」というルートを作り別の標識を立てているところがある。もともと四国のみちは自然歩道として遍路道とは別の意図で作られたので、遍路道と外れる場合もあるが、多くは重なる。世界遺産化に向け、4県共同で行政独自の遍路道シールも貼られるようになった。これも宮崎地図と異なる場合がある。これらの道は、原則どれを選んでも目的地にはたどり着く。それなのに、迷い易い標識は迷惑だと批判する人まで出る始末。遍路道は複数あり、時代とともに変遷すると説明しても聴く耳持たぬ人がいるのは悲しい。

時代とともに変わるなら、現在わかる範囲で、一番古い道を再現してみようと試みたのが、拙著『江戸初期の四国遍路』(法藏館)である。1653年、澄禅という真言僧が歩いた記録『四国辺路日記』の道程を再現しようと取り組んだ博士論文を基にした。10年がかりで現地調査をして確かめ、現在の地名に当てはめ、地図上に落としたものである。現在は新道建設で崩されたところや、草木繁茂で通行不能の場所もあるが、それらも含め、できるだけ再現に努めた。

宮崎地図と重なる部分も多いが、昔はトンネルや大きな橋はなかったので、当然別ルートとなる。また、澄禅は現在の札所番号通りには回っていないので、そうした部分は大きく異なる箇所がある。あくまで学術調査で調べた道なので、通行不能の道を行くことは不可能である。したがって無理にこの道を選ぶことがないようお願いしたい。たとえば、室戸岬の24番最御崎寺から岬の南西に下りる道は、車道のスカイライン建設のため、徒歩道はずたずたに寸断され崖になっているところもある。車道を下りるしかないのである。

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