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宗教番組の制作に携わって半世紀 ― 教えを受けた人たちの言葉(1/2ページ)

元NHKディレクター 金光壽郎氏

2016年2月12日
かなみつ・としを氏=1927年、岡山県生まれ。54年、京都大経済学部卒業後、NHKに入局。札幌、京都、東京などの放送局に勤務し、主に教養番組を担当。「こころの時代」等の宗教番組を手掛け、84年に定年退職してからも番組制作に関わっている。著書に『生きるポイント11章』『東洋の知恵・内観』など。

宗教にほとんど関心を持っていなかった私が、本気になって宗教とはどんなものか探求し始めたのは、今から五十数年前のことでした。まだ日本のテレビ放送が開始されていない時代です。

京都の放送局で、月に1本、ラジオの「宗教の時間」という30分番組を作る3年間を過ごして転勤した先が、東京の教養部という所で、着任してみると宗教を中心に教養番組を担当するようにと言われた時からです。それから宗教関係の本を読み始め、また仏教やキリスト教の法話や説教を聞いて回り始めました。

自分が宗教のことを知らないという自覚はあったので、とにかく早く宗教というものの全体像の感触をつかみたいという一心でした。

「まことに驕慢至極なこと」

在家仏教協会の加藤辨三郎さん

そういう時間の中で、私の宗教に対する姿勢に強烈な一撃を与えてくださったのが、初代の在家仏教協会理事長、加藤辨三郎さんの言葉でした。加藤さんは協和発酵の創業者でしたが、発酵化学の専門家であり熱心な仏教者でもあって、月に1回自分の住んでいるマンションの1室で『阿弥陀経』の講話を続けておられました。「清話会」と呼んでいたと思いますが、昭和40年頃のことです。

いつも現代の具体的な事柄を取り上げて話された後に、「いろいろ申し上げましたが、結局はお念仏一つでいいんですよ」と必ず付け加えられました。その会にできるだけ出席するように努めていた私は、この「お念仏一つ」という、カビが生えているように思える言葉で締めくくられることが納得できませんでした。何回目かの聴聞のとき、私は「いつもお念仏一つでいいとおっしゃいますが、科学者であり実業家でもある加藤さんですから、お念仏というような昔から使い古された言葉でなく、現代に生きている私たちに現代の言葉で話していただけませんか」とお願いしました。

すると加藤さんは、いつものように淡々とお話ししてくださいました。その中で、「私も若い頃は、今の方と同じようなことを考えていましたが、後に仏教のことが分かってみると、まことに驕慢至極なことでございました」とおっしゃっていました。

その言葉の中の、「今の方」というのは私のことで、自分は仏教のことを知らないと自覚しているので頭を下げて教えてくださいとお願いしている、この自分が驕慢至極であるとは、一体自分のどういうところを指して言われているのだろうかと、その時は全く納得できず、しかも驕慢至極という強い言葉だったので、頭の中は真っ白になり、どこが驕慢なのかということが宿題のようになって、それからしばらくは驕慢至極が頭から離れませんでした。

この時から、自分自身に眼が向くようになって、いろんな方のお話を聞く時も自分自身に引き付けて聞くことができるようになったと思います。

「なあんだ、夢を見ていた」

小田原市の塾の和田重正先生

その後、教えられたことは多いのですが、特に自分に大きな影響を与えてくださったのは、神奈川県小田原市で塾の先生をしていた和田重正先生でした。塾といっても受験塾ではなく、若い頃体得できた自分の生き方を柔軟な心の10代の中学生、高校生に伝えたいために作った塾だということでした。

和田先生は、「自分は話をするのが得意ではないから」と話すのを渋っていましたが、何とか説得しようと私がいろいろ話しかけるうちに、忘れられない幾つかの言葉が出てきました。その一つが次の言葉でした。

私が何気なく、「理想像へ向かって精進して行けば、いつかはその境地に到達できるものでしょうねえ」と言うと即座に、「それでは、とんでもないところへ行くでしょうねえ」と返ってきました。私の頭の中では、当然、「そうですよ、あなたも頑張ってください」といった返事が返ってくるだろうと無意識のうちに考えていたのが、全く違った言葉だったので、先生は私の言うことがよく聞こえなかったのではないかと思い、前より大きな声で同じ質問を繰り返したところ和田先生も前より大きな声で「それでは、とんでもないところへ行くでしょう」と断定されました。

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