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「明治仏教」研究事始め(2/2ページ)

龍谷大教授 中西直樹氏

2018年2月28日

大正13年には、『大谷派近代年表』が大谷派本願寺編纂課から刊行された。この年表は、侍董寮出勤の学師であった水谷寿と横田満との共著であった。侍董寮は、六五〇回遠忌法要の際に設置された宗義の研究機関である。本書巻末に加藤智学(侍董寮主事)が寄せた一文には、水谷と横田とは、明治維新前後の宗門史料を入手することが困難であることを遺憾に思い年表を作成したとある。後にこの年表は、真宗教学研究所によって改訂され、昭和52年に『近代大谷派年表』として刊行された。

東本願寺宗史編纂所

『大谷派近代年表』刊行の3年後の昭和2年7月、宗史調査・研究のための常設施設として宗史編修所が大谷大学に設置された。このときのスタッフには、一柳知良教学部長が所長を兼務したのをはじめ、事務主任に圓山千之、書記に網田義雄が配属された。また編修員には日下無倫、可西大秀、水谷寿らがいた。

昭和に入ると明治仏教の研究に対する機運も高まった。昭和元年には、村上専精・辻善之助・鷲尾順敬が『明治維新神仏分離史料』を東方書院より刊行した。辻は、4年に東京帝国大学史料編纂所の初代所長に就任し、7年には『慈善救済史料』を金港堂書籍から刊行している。

仏教雑誌も明治仏教特集を企画し、5年8月に『龍谷大学論叢』が明治仏教研究特集号を出し、8年7月には『現代仏教』(現代仏教社)が創刊10周年を記念して明治仏教の研究・回顧特輯号を発行した。

昭和7年10月から9年4月にかけて、大谷派の機関誌『真宗』に、水谷寿の「明治維新以後に於ける大谷派宗政の変遷」が連載された。明治期の東本願寺の動向を知る上で貴重な資料であり、近く法藏館より刊行される『明治前期の真宗大谷派教団(仮題)』に収録を予定している。

同年11月には『宗史編修所報』が創刊され、活発な調査・研究活動が続けられた。昭和12年に宗史編修所は消滅し、その事業は宗学院に継承された。『宗史編修所報』も、翌年3月発行の18号から『宗学院編修部報』と改題され、16年6月発行の28号まで刊行された。また14年から18年にかけて、『東本願寺史料』4巻を刊行したのは、東本願寺の宗史編纂所の大きな成果である。

しかし、明治元年までの史料掲載にとどまり、近代に関する史料集は刊行されなかった。また、宗史を叙述した本編についても刊行されないまま、宗史編纂事業は戦争により中断した。

明治仏教史編纂所

明治仏教の調査・研究機関として、忘れてはならないのが明治仏教史編纂所であろう。

昭和7年秋頃、友松圓諦らが中心となり明治仏教史編纂準備会が設置され、翌年3月1日には、東京銀座の菊池ビル3階に明治仏教史編纂所が開設された。当時、明治初年から仏教界で活躍した人物が次々に世を去り、貴重な史料が散逸していくなかで、関係史料と記録を保存していくことの必要性が強く認識されていた。

明治仏教史編纂所は、宗派を超えて史料提供と情報交換を呼びかけ、全国の都市に明治仏教談話会を開催するなど、明治仏教研究の先導的役割を果たした。昭和9年頃に明治仏教談話会事務所は、東京のほか、京都・名古屋・福島・大阪・浜松・神戸・豊橋・福島県白河町・宇都宮・長野・仙台・高崎などに設置されていた。

こうした活動を通じて蒐集された膨大な関係史料の一覧は、『明治年間仏教関係新聞雑誌目録』(昭和9年)、『明治仏教史編纂所蔵目録』(同47年)に記載されている。現在、その史料は慶應義塾大学附属斯道文庫に寄託されている。

雑誌『明治仏教』

雑誌『明治仏教』は、明治仏教史編纂所付置の研究組織である明治仏教研究会の機関誌として昭和9年8月に創刊された。12年3月発行の通巻28号までの存在を確認できる。しかし、戦時下に事業が頓挫してその存在は忘れ去られ、今日、近代仏教史を研究する者でも『明治仏教』を知る者は少ない。

若干の欠号があるものの、そのほとんどを蒐集することができたため、近く不二出版より復刻する予定である。明治仏教研究振興の一助になればと考えている。

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