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観光公害 時に毅然とした対応も(6月21日付)

2024年6月26日 09時22分

昨今の円安傾向もあって、大勢の外国人が観光に訪れるようになった。今や観光地は慢性的なオーバーツーリズム状態である。日本の習慣やマナーを知らない観光客のために、迷惑行為も各地で多発している。そんなことをするのはごく一握りだろうが、観光客の母数が大きいため目に余る行為が常態化している。統計によれば、京都市民1人当たり年間の観光客は30人にも上る。京都は今、観光公害とも言うべき状況にある。

迷惑行為は、静謐な空間であるはずの神社仏閣でも目立つようになった。つい最近も、八坂神社の鈴緒を夜中に乱暴に鳴らす外国人観光客たちを注意した女性が、逆に外国人ガイドからののしられる動画がSNS上で拡散し、大きな物議を醸した。欧米のキリスト教会やイスラム圏のモスクで、観光客がこのような振る舞いをすれば、有無を言わさずつまみ出されるだろう。結局、八坂神社では「参拝者の安全を考慮し」、夜間に鈴緒を鳴らせないようにしたのだった。

本紙5月29日付社説では、宗門や教団がQRコードを介して動画を流すことで、日本の宗教文化への理解を促す案を紹介した。望ましい対応策だが、一方で、もはや悠長なことを言ってはいられない現実もすでに起こっている。外国人観光客の中には、明確に禁止されない限り、好きなように振る舞ってよいと考える人も少なくないからだ。あるべき理想だけでこの実態を改善するのは難しい。単純に、拝観料を上げればいいという問題でもない。それは宗教施設の本質に関わる問題なのである。

伝統教団の宗教施設では、近年来、社会に開かれた在り方を取るべく、自らの敷居を低くするように努めてきた。しかしながら、参拝者を押しのけるほど観光客が大勢押し寄せてきたら、これまで門戸を広く開いていた寺社も、対応の仕方をいや応なく考え直さざるを得ないだろう。

境内は聖なる空間である。そこでの振る舞いも当然、静謐を心掛けることが求められる。なにも外国人観光客に正式な参拝作法を守らせようというわけではない。日本人だってそうした参拝作法は知らない場合が多いのである。むしろ観光するならば観光するで、ここは日本の伝統的な宗教施設であり、神仏への敬意や参拝者への配慮をわきまえてもらえれば、それで十分なのである。大切なのは、観光客も宗教施設において有すべき最小限のエチケットである。

それでも目に余る場合、宗教者は時に毅然とした対応を取ることも必要である。

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