父が導いた僧侶への道
総本山教王護国寺 橋本尚信長者(76)
東寺真言宗総本山教王護国寺(東寺、京都市南区)第258世長者・宗派管長として7月21日に入山した。宗派の庶務部長、宗務総長を歴任。伝法学院長も務め約30年間、宗務に携わった経歴を持つ。
自坊は神奈川県小田原市の福田寺。師父・眞栄氏の思いを背負い僧侶になった。9歳で得度した父は雲照律師の目白僧園(新長谷寺)で学んだが戦争を経験し、農地解放など受難の時代を生きた。銀行員としての姿が記憶に残る。「父は僧侶として生きたかった。自らの命に代えて私を僧侶の道に導いてくれたのだと受け止めている」
高野山大に入ってほどなく19歳の頃、眞栄氏が50代半ばで死去したため専修学院と円通律寺道場(真別処)での修行を終え、1972年に24歳で住職になった。常に自分が若輩だったが、周りの老僧からの指導は力になった。大学時代は講演部に所属。幻灯機を用いて絵像を示しながら法話し、南は沖縄まで各地に赴いた。高野山真言宗総本山金剛峯寺の松長有慶・第412世座主の読書会に参加し、久利隆幢・金剛三昧院住職にも多くを教わった。
卒業後は明倫学園(現横浜清風学園)で6年勤務した。自坊の護持に専念するため一念発起して退職。少しずつ檀家も増え、88年には関東大震災で大きく損傷していた本堂を新しく建立した。
東寺を開いた弘法大師の教えの核心は「この身のまま仏である」と悟る「即身成仏」だと考える。「如実知自心」とも言うように「自分自身が仏なのだと気付くことで、悪を遠ざけ、日々をよく生きられる」と話す。
(磯部五月)