皆で支え合う本願寺に
浄土真宗本願寺派本山本願寺 藤實無極執行長(82)
穏やかな笑顔や物腰で感謝の言葉が絶えない人柄。執行長就任の抱負について「個人的には『念仏を喜んで生きる人』というロールモデルが必要だと思っている。私もそうなれるよう努め、にこやかな温かみを伝えていきたい」と語った。
出身の島根県大田市の寺には、毎朝のお勤めで本堂の阿弥陀仏、親鸞聖人御影、蓮如上人御影などに順番に礼拝する習慣があり、篤信の祖母から「お礼せえ、お礼せえ」と言われて育った。現在も生活の節目に感謝や念仏が絶えないのは、幼少期の薫育に原点がある。
龍谷大大学院を修了した1966年に本山宗務所に入所し、各部部長や教務所長を歴任。退職後も監正局の特別審事や局長などを務め、60年近く宗務畑を歩んできた。
特に1992~99年の参拝部長時代に日谷周暎総務(当時)から「自分の親きょうだいや親戚、友人が来た時と同じように温かくお迎えしなさい」と参拝者接遇の心得を指導されたことを最も大切にしているという。
8月7日の執行長選挙では本命視された現職の安永雄玄氏が候補者に指名されなかった。「安永さんの優れた手腕は引き継ぎをしてみるとよく分かる。ただ“企業の人”ならではのスピード感に周囲がうまくついていけなかったのではないか」と受け止めている。
今後の本山運営の方針は検討中だが「皆で支え合う『共生の本願寺』になってほしい。それは生きている人だけではない。亡くなった方々も往生安楽国で生き続けている。目に見えない存在を含めて、お互いにどう生きるのかを考える。その“根”を弱らせてはならない」と願う。
(池田圭)