「鬼滅の刃」と日本人 この社会現象は、なぜ続くのか…一条真也著
今や世界規模となった『鬼滅の刃』ブームの本質を、経済的な効果だけでは語れない側面から考察する一冊。日本人の伝統的な「鬼」観や共同体観、神道・儒教・仏教の観点から同作がいかに日本的な精神世界に基づいた物語であるかを論考し、さらには戦後の象徴的「英雄」である力道山や、同じく大ヒットしている映画「国宝」と対比することで、同作がなぜ社会現象を巻き起こすまでに受容されたのかを述べていく。
同作の劇場版が爆発的ヒットを遂げた二つの時代――コロナ禍によって多くの祭礼や参詣が失われた2020年と、政治不信やコメ不足、外国人増加による文化的動揺が深刻化した昨年は、人々がアイデンティティー喪失の不安を感じ、支えとすべき安心感や新たにアイデンティティーを保証するものを求めざるを得なくなった時代だったと著者は指摘する。しかし、だからこそ「極めて日本的な」この作品が文化現象になり得たのは偶然ではなく必然なのだと主張する。
現在、多くの人々は将来の見通しがつかず日々ストレスを感じながら生きている。そのような現代において鬼滅の刃は、不安を和らげ、秩序を回復する象徴として機能しており、いわば大衆的な祭礼として受容されているのではないかとの見解を示す。
定価1540円、産経新聞出版(電話03・3242・9930)刊。



