人々とある暦
年の瀬が近づき新しい手帳やカレンダーを手に入れようという人も多いだろう。六曜が記されていたり、月の満ち欠けがあったり、様々なものが店頭に並ぶ◆時を刻む暦は宗教や地域の文化、伝統と密接に関係している。イエス・キリストの誕生を紀元とする西暦、日本では和暦が用いられ、1年が13カ月あるエチオピア暦などもある。南伝仏教(上座部仏教)が伝わる国々では釈尊が亡くなった年を紀元前544年と定めて仏暦を用いる◆ただ始まりの年を1(元)年とするタイやカンボジア、ラオスに対して、0年とするのがミャンマーやスリランカなど。前者は西暦に「こ(5)よ(4)み(3)」を加えて仏暦を計算できるので覚えやすい◆江戸時代、南部藩の一部で用いられたのが田山暦。本草学者・菅江真澄やシーボルトらが紹介した。農具や動物の絵で表現されることから、字が読めない農民のための暦として理解されてきた。だが近年は庶民のユーモア、独自の文化を伝えるものとされ、庚申信仰との関係も指摘されている◆暦は常に人々と共にある。今は紙ではなくデジタルで利用する人もいるだろう。月めくりで仏像と名僧の墨蹟を楽しめるのが、中外日報オリジナルの「墨跡つき仏像カレンダー」だ。仏の教えを書で味わい、荘厳な仏像を一年を通じて拝むことができる。宣伝くさくなってしまうが、お薦めしたい。(赤坂史人)