宗教の自由
米国には「国際宗教の自由法」があり、国務省に「国際宗教の自由局」が置かれている。毎年、国務省からは「国際宗教の自由報告書」が発表され、日本の新聞でも取り上げられることがあるので、知る人も少なくないだろう◆宗教や信条の自由を推進することはアメリカの外交政策の「中核目的」とされている。宗教の自由擁護はアメリカの「正義」を担保する重要な理念であるとともに、非友好国を牽制する外交カードにもなる◆宗教の自由抑圧が特に深刻と見なされた国は、上記の法に基づき「特定懸念国」に指定されている。中国や北朝鮮などは常連だが、昨年にロシアがリストに追加され、今年初めに再登録された◆そのロシアも他国の宗教の自由侵害には敏感だ。ロシアが問題とするのは、モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会(UOC)に対する迫害である。ウクライナの宗教事情に触れる紙幅はないが、同国政府が国家安全保障の見地からUOC非合法化法案を議会に提出し、3読会制の第1読会を通過した。人権侵害の懸念はもちろんウクライナ議会内にもある。一方、ロシア側はここぞとばかりにキリスト教弾圧を世界へ向けてアピールする◆宗教の自由が国際政治のカード、ハイブリッド戦争の「兵器」にも利用される。宗教・信教の自由とは何か。こうした側面も頭の中に入れておきたい。(津村恵史)