パーリ聖典における「信」 -saddhāの意味と性格の考究-…古川洋平著
本書は、パーリ聖典において「信」を意味するsaddhāの用例に対して「何に対するどのようなsaddhāなのか」に主眼を置いて一つ一つ丹念に分析し、その本質をより明確化しようとしている。これまでの研究では十分に解明されてこなかった初期仏教における「信」の根幹に迫ろうとする試みであり、仏教用語についての基礎的研究として注目に値する一冊。
可能な限り類義語による理解に頼らずに、パーリ聖典中の各文脈からsaddhāそのものの意味や性格を取り出すことを方法論として採用。動詞形や名詞形など品詞ごとに分類検討し、またその分類検討を下地として意味や性格に関する考察を加えている。使用される状況に応じて様々な形式が認められること、仏教成立以前から受け継がれていた用法を受け継ぎつつも、仏(如来)が事実として覚っていること(仏に対するsaddhā)を基盤に形成されていることなどを指摘する。
付録として「律蔵・経蔵中のsaddhāの用例一覧」も収録する。著者は「本書を通じて得られる初期仏教におけるsaddhāの様態が、今を生きる人々が日々の生活の中で『信仰』『信心』をより価値あるものとして捉えていくための土台となることを願う」と述べている。
定価6600円、東洋哲学研究所(電話042・691・6591)刊。




