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不登校から⑤ 「駄目な親」と思い込み苦悩

不登校から⑤ 「駄目な親」と思い込み苦悩

ジェリービーンズの3人が学校に行けなかった頃、大津市の自宅近くにキリスト福音教会があり、山崎雄介さんと史朗さん兄弟はその「土曜学校」に行っていた。1歳上の八田典之さんも「牧師さんの包み込むような優しい雰囲気が好きで」時々顔を出し、そこでギターを教えてもらった。それが、現在は滋賀県東近江市の福音教会に勤務する田中隆裕牧師(58)。「山崎兄弟も典之さんも、子供の集まりで私とよく一緒にトランプやいろんなゲーム、ドッジボールや琵琶湖で釣りもしました」と振り返る。

だが、そのように彼らが出掛けられるようになる前、山崎家では双子兄弟の5歳年上の姉も不登校で、当時40代だった母親の真弓さんは憔悴しきっていた。そして田中牧師が信徒宅で開いている家庭集会に知人に誘われて訪れた。何度か聖書の話をする会に参加した後のある日、真弓さんは苦しそうに子供らのことを牧師に相談した。

「『登校拒否』という言い方をされました。当時は世間がそう見ていました」。牧師はただ耳を傾け、「一緒に神様に祈りましょう」と呼び掛けた。「私は話し下手でしゃべらないからよく聞け、心を開いてもらえたのかもしれません」

ただ田中牧師は「学校に行くから良い子、行けないから駄目ではなく、どちらも価値があるのです」と伝えた。競争社会の価値観に自分を合わせがちだが、そうではない価値があることを示した。それは、旧約聖書『イザヤ書』の「あなたは高価で尊い。私はあなたを愛している」との神の言葉による。

引きこもり、落ち込んで小学5年生で自死を図った雄介さんを「あんたが生きてさえくれたらもうそれだけでいいんや」と涙で抱き締めた母親。母親が以前のように「学校へ」と言わずに優しくなったのを雄介さんは感じていた。「この世にあるだけで尊いと、受け入れてくれるようになった」

田中牧師に真弓さんは「言葉がすっと心に染み込み、荷を下ろした気持ちです」と打ち明け、その後に受洗した。牧師の胸には「誰でも重荷を負う者は私のところへ来なさい。私があなたを休ませてあげる」(新約聖書『マタイ書』)との言葉があり、疲れた母親にそのように接していた。田中牧師がこうして「ありのままを受け止める」ようになったのは、若い頃の体験があったからだ。

大学を出て牧師になる前の3年間、中学の美術教師をしていた時に担任クラスに不登校がちの生徒が2人いた。虐待や親がいないなど家庭が複雑で、毎日のように家を訪問したが、どうしていいのか分からない。一人は全く来なくなり、もう一人は早朝登校するようになったが、「学校になじめたのか、来させることが良かったのか」考え込んでしまった。

史朗さんは自らの経験から親も苦しんだのがよく分かる。「不登校児の親というレッテルで、親自身の問題になる。『この子の将来は終わり。駄目な親』と思い込むのです」。親も子も型にはまった「満点」を目指さない方がいいという。

「当時、親を悲しませるのがすごくつらかった」と話す八田さんも、親の会やカウンセリングで母親が明るくなったのがうれしかった。田中牧師は「困っている当事者が安らぐ場があれば」と、今も日曜礼拝には芋煮会などくつろげる機会を設けている。3人が取り組む親の会でも「様々な困難がある世の中でいろんな道があると説いてもらえば生きやすい」と宗教者に期待する声があった。

(北村敏泰)

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