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死のプロセス 生命の意味を感知する時間(10月25日付)

2023年10月27日 09時37分

脳死問題が議論を呼んだ当時、免疫遺伝学を専門とする多田富雄氏が、死には長いプロセスがあることを指摘した。死を看取る者にとって、死が刻々と進行していく現実を確かめることは、死者と生者との間で何かが成熟していく時間の流れを共同体験する重要な意味を持つ。こうした死を「感知」することのない日常や、プロセスのない死のみを「認知」する生活が、私たちの生を危ういものにしているとの警告である。

多田氏はニワトリの断頭実験と人間の死における「三徴候」を例示した。頭を切り落とされたニワトリは死ぬが、その死は断頭の瞬間に生ずるのではなく、心臓はしばらくの間鼓動し続け、腸の蠕動も止まらない。筋肉は長い間反射運動を繰り返し、身体の代謝も脳の機能も完全に失っていない状態にある。しかし人間はニワトリを死んだものとして取り扱い、そのまま食肉加工に回される。加工に回された食肉は数日たってもかなりの細胞は生きており、培養液の中に移せば生きて分裂する能力を持っているという。

人間の場合は、心拍の停止、呼吸停止、反射消失をもって死の三徴候とするという基準が明治以来採用されてきた。ニワトリと人間の死の基準は違う。だが、DNAの解析から見れば、地球上の生物は皆同じ構成成分から成るDNAで決定されており、高等脊椎動物の生命の機構は、ニワトリもモグラも人間も基本的には同一だという。大きく異なるのは大脳の発達であり、それによって人間はほかの動物種とは違った感情や知性、文化を持つようになった。

死について、多田氏は「感知」と「認知」を対比させて論じている。直覚的な「感知」に対して、知識と概念による判断を伴うのが「認知」である。人間は死を「感知」することによって愛や悲しみ、共同体意識を持つようになり、そこから文化や伝統が形成され、生命の意味を知ることになった。それに対し、医学における死は、明確な観察と基準によって「認知」された死であり、これによって人間の死は「直覚的なものから冷徹な事実」へと変わる。

死に至る様々な変化のプロセスを断ち切るのが「脳死」という「認知」であるなら、医療現場で起きているこの死の現実が、現代に生きる私たちの死に対する認識を変え、死のプロセスを「感知」する時間を人や社会から奪ったのではないか。この時、死は生の最後のプロセスであることを教え、死の長いプロセスを「感知」する日常の回復へ導くものは宗教であることを再確認したい。

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