PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
2024宗教文化講座

処理水の安全性論議 被害者間の分断持ち込み(11月17日付)

2023年11月22日 09時54分

事故を起こした東京電力福島第1原発でたまり続ける高濃度の放射能汚染水を濾過処置した処理水の海洋放出問題。福島県富岡町にある東電の「廃炉資料館」を訪れると、事故の説明などと並んでトリチウムを含む「処理水の安全性」を強くアピールするパネルや映像、資料に大きな力が入れられている。

一方で沿岸部各地では、この問題が公の場で人々の話題になることが予想外に少ないようにも見える。檀家に漁業者も多い地元住職は「皆、諦めかかっている。反対しても国や東電はどうせやるんだから」と話す。安全だと信用はできないが、もしその不安を口に出せば将来の子孫の代にわたって操業できないようになり、自分たちの首を絞めることにつながるから、という漁業者もいるという。いわき市の魚市場で店主と話しても、「風評も何も、影響などない」とあえて語気強く否定した。

国内では原発に反対の人たちを中心に「安全性に不安がある汚染水を流すな」との声と、「風評被害が心配」との漁業関係者や住民らの声がある。前者から「『風評』との言い方は危険性にふたをするもの」との意見が出るケースが見られるのは、「風評」が「安全だが、間違った噂の方が問題」というニュアンスを含み、政府が強調するのがまさにそれだからだ。

だが「科学的に安全性が示された」というが、比較で出される他原発でのトリチウム水はあくまで2次冷却水なのに、こちらは炉心溶融で超高濃度の放射性物質・死の灰に直接触れた炉内の水。その違いも、「吸着処理」で残った方の他の高濃度汚染物質がどうなっているのかもほとんど説明がない。

経済産業省小委員会資料では現在タンク群にたまる「処理水」中のトリチウム総量は約千兆ベクレル。事故前の通常運転時の実質排出量は毎年1・4兆~2・2兆ベクレルだったので500年分にも相当するが、それを「30年をめどに」排出するとしており、東電資料では年間放出量を「22兆ベクレル未満」としている。

「憲章」で原子力利用の「増大」を明記し、電力会社からの出向も多い国際原子力機関(IAEA)の「お墨付き」も中立とは見ない意見が根強い。他の処理法の選択肢を示さず、まず「放出ありき」の国策が、お互い原発事故の被害者である漁業者と市民との間にあえて前記のような分断をつくり出しているように見える。被災者に寄り添ってきた住職は「避難への補償でも住民の間に悲しい亀裂ができた。原発の人間への罪は人々の気持ちまでかき乱すことだ」と訴える。

長期化するガザ侵攻 宗教と平和が問われている(4月24日付)4月26日

パレスチナでの戦闘が半年を超え多くの人命が失われ、ガザ地区の生活基盤は壊滅的な打撃を受けているが、なお戦闘は終結していない。イスラエルは、ハマスを壊滅させるための戦いであ…

病院の閉院・譲渡 宗教系病院の在り方とは(4月19日付)4月24日

3月末、宗教系病院で閉院と事業譲渡の動きがあった。閉院したのは本願寺ビハーラ医療福祉会が運営するあそか花屋町クリニック。同クリニックは2021年6月にあそか診療所から名称…

アカデミー賞2作品 核問題への深い洞察必要(4月17日付)4月19日

米アカデミー賞で作品賞などを受けた「オッペンハイマー」と日本の「ゴジラ―1.0」がロングラン上映を続ける。くしくも両作品とも核兵器に関連する内容だが、それぞれ戦争と平和に…

豊山派次期管長に川俣氏

ニュース4月26日
上:太平洋戦争が開戦した1941年12月8日に高野山真言宗総本山金剛峯寺から発せられた告示。「祖訓に範り挺身報国克く聖旨に応え奉るべし」とある(手に持つのは髙橋副委員長)<br>下:出征兵士の武運長久を祈る和讃

戦時資料を次代へ 宗内寺院に提供依頼 高野山真言宗が初調査

ニュース4月26日
飯田法主を中導師に奉修された23日の結願法要

開宗850年慶讃法要 多彩な行事で盛り上げ 清浄華院 オペラ・法主揮毫も 

ニュース4月26日
このエントリーをはてなブックマークに追加