寺拠点に訪問診療展開 「心身一如」の僧医志す
東京都港区 浄土真宗本願寺派正源寺 小笠原尚之副住職

東京都港区の浄土真宗本願寺派正源寺副住職の小笠原尚之氏は5月1日、境内に訪問診療専門の「高輪往診クリニック」(院長=小笠原氏)を開業する。僧籍を持つ医師が寺院を拠点に訪問診療を展開するのは、これまでになかった新しい試みで「医療と仏教をつなぐ新しいスタイル」「地域医療の隙間を埋める取り組み」として、僧侶と医師の“二刀流”の活躍に大きな期待が寄せられている。
クリニックの診療形態は、様々な理由で通院が困難な患者に、月2回(2週間に1回)を基本として自宅や施設を定期的に訪問し、診療するというもの。病状の変化などにより緊急時には24時間、365日休みなく対応する。
患者や家族としっかり相談した上で立てた診療計画を基に、僧侶であり、これまで十数年間にわたり大学病院で高度医療に携わってきた小笠原氏による心のケアと幅広い内容の診療を受けることができる。
往診エリアは正源寺のある港区をはじめ品川、目黒、大田、世田谷、渋谷、千代田、中央の東京都8区と、川崎市の川崎区、幸区。「城南エリア」と呼ばれる地区で、広域で人口も多い。
小笠原院長は島根県大田市にある本願寺派西楽寺の小笠原一道住職の三男として生まれ、同寺衆徒でもある。地元の高校を卒業後、久留米大医学部に進学した。泌尿器科を専門とし、大学院では社会医学系環境医学を専攻。医学博士号取得後、久留米大病院の泌尿器科外来医長を務めた。
40歳を迎えるのを前に、僧侶であり医師という立場を生かせる道を模索し「心身一如」の医療を志して訪問診療の道へ。その志を支えたのが3人兄弟の2番目の兄である正源寺の小笠原正仁・14世住職だった。副住職として弟を寺に迎え、さらにクリニックの拠点として庫裏を提供。クリニック総裁という立場で弟の“二刀流”を支援する。
「仏教は縁を説き、心と体は不可分という思想を説きますが、これは在宅訪問医療にも通底する考えです。単に専門領域に特化した医療技術の高さのみでは不十分で、全人的医療が求められ、家族をはじめとする多種多様な多くの人とご縁で成り立ちます。24時間備えておかねばならず、法務と診療の二刀流で行うにはかなりの体力が必要ですが、患者さんが心身共に健康に過ごせるよう誠意を持って頑張りたいと思います」
(河合清治)