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不登校から② 違っていて当然、一人じゃない

ジェリービーンズのコンサートはエネルギッシュだ ジェリービーンズのコンサートはエネルギッシュだ

「元不登校バンド」との異名を持つ「ジェリービーンズ」の講演コンサートが、ドラムスの山崎雄介さんらメンバーが拠点とする滋賀県の竜王町公民館で開かれた。

若者から中高年までの参加者で満席。ギターとボーカルの山崎史朗さんの進行で、弾けるようなハードロック調の「太陽と月と僕らの唄」から始まった。「もし僕らがみんな一人ぼっちなら 一人ぼっちを理由にして手を繋ごう 悲しみを理由にして寄り添おう…」。ストレートな歌詞に八田典之さんのベースがうなりを上げる。会場はもう手拍子で盛り上がった。

史朗さんが「3人とも長く不登校でした。何も偉そうなことは言えないけど、ここまで生きてきたから、今こうして笑えるのです」と語り、「生きづらい世の中を批判するより自分を責める青年や子供たちに贈ります。僕たちもそうだったから」と次の「果実」に導入する。「どんな形でもいいのさ 見た目など気にしないで 何度も迷いながら歩いている その道は誰とも違うから 君はしゃんと胸を張っていいのさ…」。歌いながら史朗さんは胸に手を当てる。続いて、雄介さんが自らの生い立ちと経験をじっくり語った。

全く学校に行けなくなったきっかけは、強い指導者タイプで放課後に個別授業をしてくれた男性担任教諭が、国語の書き取りで「山崎君、字汚いな」と言った一言。一対一の緊張を和ませるための冗談めかした言い方だったが、雄介さんは糸が切れたようになり沈黙したまま帰宅した。それから転落するように引きこもる。だが自死未遂体験を経てバンド活動をするようになった17年後、母親から「実は先生はあれから毎日、家まで会いに来てくれてたんや。会ったらまたお前が落ち込むと思って追い返してたけど、卒業までずっと」と打ち明けられた。

そして母親が預かっていた教諭の「雄介、卒業おめでとう」という手紙には、傷つけてしまったことのおわびと、「君にとって良い先生にはなれなかったね。何もしてあげられなかったけど、いつもいつも君のことを考えていました。これから、ただただ幸せであることを祈ります」との言葉が弱々しい字でつづられていた。「強そうに見えても、先生も僕と同じように悩みを抱える弱い人間やったんや」。そんな気持ちが込み上げ、目頭が熱くなって手紙がにじんだ。「相手のことを思えば、その気持ちはいつか伝わるのです。生きてさえいれば」

かみしめるような雄介さんの話に会場は静まり返り、涙を拭う人も多い。3人は「たくさんの人に助けられてここにいる」「互いに認め合うこと」とそれぞれアピールし、各地で不登校の児童や親の集いを開いている活動の経験から「居場所が大事」と訴えた。

そして、アンコールに演奏したのは「大丈夫」。「君は今 何を背負っているの 違っていて当然だよ 孤独(ひとり)なんかじゃないから」。以前、史朗さんがギターを教えていた統合失調症の女児に宛てた曲で、その子は幻聴に苦しんでいた。

「大丈夫 ちゃんと聴こえたよ 僕は信じているから」とメッセージを歌う。「苦しむ彼女に何もできないけど、背中をさすって一緒に泣いている時、僕がいるから大丈夫と言えたのです」と史朗さん。「どれだけそばにいても 祈る事しか出来ない」「悲しみに代わる笑顔を一緒に探しにいこう」との歌詞には、東日本大震災などの被災地や社会の苦の現場で人々に寄り添う宗教者たちの姿勢に通じるものがある。

(北村敏泰)

ジェリービーンズのメンバーは公演後も聴衆と交流する

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