保守分裂下の戦後80年 社会の「分断」傾向を憂慮(8月8日付)
間もなく、終戦80年の日を迎える。この80年間、世界のどこかで絶えることなく戦争、紛争が続き、今はロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ攻撃の惨禍が連日報じられている。第3次世界大戦の危機、あるいは大戦はすでに始まっているという指摘さえある。
日本はこの間、戦争の直接当事者にはならず、「平和」を享受してきたが、その状態が永続するかどうかが今深刻に問われている。
先般の参議院議員選挙で自民・公明の与党が大敗し、衆議院に続いて参議院でも与党が過半数割れとなった。このような政治的不安定化は初めてではないが、海外メディアが「極右政党の台頭」と指摘する(西欧の同様の動きと比較したくなる)選挙結果になったのはやはり気になるところだ。
自民党の惨敗は旧統一教会問題や裏金疑惑を背景とした従来の保守支持層の分裂の結果でもあるだろう。自民党の重なる不祥事がなければ、急躍進した新しい政党の議員も、極右からリベラルまでを幅広く含む自民党内の一員になっていたかもしれない。
「参政党」という党名も示唆的で、政治家の世襲化による新人の政治参加の壁の存在を暗示するようにも読める。ともかく、親から、あるいは一族で代々受け継いできた地盤によって立つような2世、3世政治家は多い。世襲が全て悪いというわけではないが、良い意味での緊張を欠き、政治に閉塞感を与えかねないし、現実に与えているだろう。
国際秩序を否定するトランプ政権の動きのため、日本のよって立つ立場は不安定で、見通しがつかない。そのような閉塞状況で、右派の日本ファーストの主張はもろくなった自らの足場を支えてくれそうな印象もある。
SNS情報の影響があってか、投票率は前回参院選を上回った。躍進した政党はそれを効果的に利用したと分析されている。その一方で、そこに選挙制度や民主主義の脆弱な部分がはっきり見えてきた。今回の選挙に限らずSNSの特性を利用した動きに、宗教批判の際に指摘されてきた「カルト」との親近性をどこか感じさせるところがあるのは気がかりだ。
保守層分裂の構図の中で、「分断」の危険な兆候も現れてきた。挑発的言動で注目を集めるデマゴーグの手法を得意とする人々がいる。マスメディア、SNSなど現代の情報社会の構造はこうした人々が利用しやすいものとなっている。「社会の分断」をあおるような言説・行動には特に警戒を強めたい。