ガザの医師の訴え 「憎まない」平和への和解(9月18日付)
米国のイラン戦争に乗じ、さらに周辺国へも攻撃姿勢を続けるイスラエル。そのガザなどへの侵攻でなおも日々犠牲者が増え続ける中で、ユダヤ人とパレスチナ人の真の和解共存を訴えるドキュメンタリー映画「私は憎まない」(2024年、カナダ・フランス)が各地の上映で反響を広げる。
難民キャンプに生まれ米国の大学で医学を学んだ主人公のパレスチナ人産婦人科医師イゼルディン・アブラエーシュ氏は、ガザからイスラエル内の病院に勤務し双方の患者を治療、赤ん坊を取り上げている。「人の命を救う医療に分け隔てはない」との考えを口にし、自身の子供らにも高等教育を受けさせている。
だが09年、イスラエルの軍はそれを踏みにじり、無差別侵攻した戦車が医師の家に何度も砲撃を加える。娘の留学を楽しみにする家族だんらん中の場は地獄と化し、娘3人とめいは死亡。めちゃめちゃになった家で、頭を吹き飛ばされ誰が誰かも分からない惨状に、医師は「なぜこんなことを」と絶叫する。
ところが、事態が交友のあったディレクターを通じてイスラエルのテレビ局で報道された時、医師は憎しみや復讐ではなく、和解の大切さを涙で語ったのだ。イスラエル政府と軍に怒り、その責任を裁判で追及しつつも、ユダヤ人を「恨まない」と。
それによってイスラエル国内にも衝撃が走り、平和を求める人たちからは医師の主張への共感が集まった。これは17年前の出来事だが、両民族は彼のパレスチナの地で千年以上も共存し、融和して生活してきたのだ。
しかし、イスラエルの軍事的抑圧は建国以来何十年も続いている。現在もガザでは封鎖による子供たちの餓死も含めた人道的危機がつくり出され、ヨルダン川西岸地区でも軍と武装入植者が住民の土地を強奪する国際法違反の蛮行が国連でも批判されている。
イラン戦争でも出た平和への取り組みに聞く耳を持たないイスラエル政府の強硬さは、映画でも医師家族への加害を謝罪もせず責任も認めない姿勢に表れている。
家族を殺害された怒りを表明しながらも「憎まない」という態度は理解が困難かもしれないが、日本を含め世界各国で医師の訴えの手記が翻訳され、講演も続けている。「中東のガンジー」と評され、ノーベル平和賞候補ともいわれる彼の言葉が本質を突く。
「病院の中ではどの命も平等です。なぜ、外でもそれができないのでしょうか」。そして「悲劇を必ずプラスに変えてみせる! 世界の全ての人々のために」と。
映画はDVDにもなっている。








