PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR

国家安全保障 国益と宗教の自由(1月15日付)

2025年1月17日 10時57分

米のトランプ次期大統領がデンマーク王国の一部であるグリーンランドを買収するという考えを表明したことが波紋を呼んでいる。アラスカ買収など過去の例を挙げて解説されても「いま何を言い出すのか」という印象は否めない。背景に中国進出への対抗、ロシアに対する防衛戦略があるとされる。グリーンランド領有は米国の国家安全保障つまり国益上必要というわけだ。中国、ロシアと同じ大国主義の土俵上の話である。

「国家安全保障」は、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画で、バイデン大統領が阻止命令を出した理由に挙げられた。なぜ国家安全保障上の懸念があるのか、石破茂総理が異議を唱えたのは当然だが、権力者が持ち出した国益を撤回させるのは難しい。

最近、国家安全保障が問題になった例として、ウクライナにおけるモスクワ系ウクライナ正教会(UOC-MP)の活動禁止法がある。ロシアは宗教の自由弾圧だ、と国連で問題提起し攻撃した。

ウクライナ政府は、UOC-MPが侵略を正当化する「ロシア世界(ルースキー・ミール)」のイデオロギーを布教するなど、国家安全保障上の脅威があることを法的規制の理由とした。しかし国連人権高等弁務官事務所は「市民的および政治的権利に関する国際規約」などで「宗教の自由」の厳しい規制の根拠として国家安全保障は含まれていないと警告した。

侵略初期段階からゼレンスキー大統領はロシア正教がハイブリッド戦争の道具だと抗議していたが、UOC-MP規制法については西側の反発を配慮して慎重だった。これに対し、ハイブリッド戦を仕掛けたロシア側からすれば「宗教の自由」侵害の主張は有効な武器になる。それを国連は示した。

「宗教の自由」護持を外交上重視する米国は世界各国の「宗教の自由」状況を年次報告書にまとめ、自由を抑圧する国をリストアップし、外交的圧力や経済的制裁を与えることもある。危うい人権状況を放置するのは建国の理念、国家安全保障上の問題にもつながる。ただ米国流のバイアスがかかった「宗教の自由」であり、国益の面を無視はできない。

本紙にとって、憲法が保障する「信教の自由」と「政教分離」は取材活動と報道の根底に押さえておくべき理念だ。しかし特に法律との関係において、必ずしも揺るがない盤石の基準を有するわけではない。ウクライナの例や、我が国の「カルト問題」などを考えるならば「信教の自由」に関する言説に慎重な判断を示すのは宗教専門紙としての責任だろう。

能登で増える関連死 阪神大震災の教訓生かされず(2月7日付)2月14日

能登半島地震の関連死が増え続け、300人に近付いている。地震と津波による直接死228人をはるかにオーバーしたのは、阪神・淡路大震災の教訓が無視され、自然災害より人災と言え…

破壊の限りを尽くす 入植者植民地主義の国(2月5日付)2月7日

第2次大戦後、インドの独立をはじめ世界に脱植民地化が広がる中、イスラエルは逆に入植者植民地主義によって建国を実現した。通常、植民地は宗主国が資源や労力を搾取する形だが、入…

小欲知足の心 欲望追求から減速への転換(1月31日付)2月5日

20年前、ケニアの環境副大臣だったワンガリ・マータイさんがノーベル平和賞を受賞した。グリーンベルト運動(植林活動)を通じて環境保護と民主化へ取り組んだ功績が評価され、環境…

本願寺派企画諮問会議 賦課基準総局案を一部修正 領解文問題、SNS上の批判憂慮

ニュース2月14日

スローガン「ご開山聖人のみ教えにであう」 新年度方針・予算を可決 本山本願寺

ニュース2月14日

曹洞宗通常宗議会17日招集 会館再開発の方針表明へ 僧侶減への対策も議論か

ニュース2月13日
このエントリーをはてなブックマークに追加