〈わたし〉を捨てる。 山岡鉄舟に学ぶ「無敵」という生き方…平井正修著

他人の評価が気になり、承認欲求がいつも満たされないなど、自分と周囲の人々との関係性で悩んでいる人は少なくない。本書はそんな人たちに対するメッセージとして、臨済宗国泰寺派全生庵(東京都台東区)の平井正修住職が、同寺開基の山岡鉄舟(1836~88)に学んだ「〈わたし〉を捨てる」生き方を指南する。
幕末から明治期に活躍し、江戸城無血開城の立役者としても知られる鉄舟を象徴する言葉は「無敵」。「その分野で世界一になる」とか「自分が誰よりも強い存在」ということではない。「自己あれば敵あり、自己なければ敵なし」。これは鉄舟が悟りを開いた時の言葉だが、自分にとっての本当の最大の敵は「自分の心」であり、鉄舟はその心を制御することを無敵と表現している。
「自分をいかに相手に認めさせるかということを考え始めると、『俺が、俺が』と自己を強く押し出していくことになる。そうすると必ず意見の違う者が出現する。これが、いわゆる『敵』。相反する者が出現するのは、自己の中に『俺が(自分が、私が)』というものが先に生まれているからで、もっと柔軟になって、凝り固まった『自分』などというものが最初からなければ、自ずから『敵』もいなくなる」
定価1760円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。