恐怖指数
恐怖を推し量る、一風変わったバロメーターがある。それによると、値が20を超えると要注意、30を超えると警戒すべき水準とされる。40以上なら、パニック状態にあると見なされる◆この指標は「ボラティリティ・インデックス」、略してVIXという。米国のシカゴ・オプション取引所が公表する株価指数の一種で、将来予測される市場の変動率を示す。株式市場に対する投資家の不安が高まると数値が上昇することから、通称「恐怖指数」と呼ばれる◆40を上回るとパニックとされる中、80を超えた例もある。過去最高値はリーマン・ショック時の2008年10月で89.53。コロナ禍の20年3月に記録した85.47がこれに続く。いずれも異次元の高値といえ、投資家心理が絶望に近い恐怖に見舞われていたことがうかがえる。ロシアのウクライナ侵攻時でさえ40を超えていない◆ところが4月7日、VIXは一時的に60を突破した。相互関税を巡る米トランプ大統領の発言を受けたもので、政策の不確実性などから世界的な景気後退への懸念が高まり、日本を含む主要国の株価は軒並み急落した◆その後は相互関税の一時停止や英国・中国などとの引き下げ交渉が進んだ結果、VIXは20前後に落ち着いた。とはいえこの間、世界経済はトランプ氏の言動に翻弄され続けている。そのこと自体が恐怖ではないか。そんな印象が拭えない。(三輪万明)