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自死遺族の苦悩④ 救いと事務的、宗教者に雲泥の差

遺骨などを入れたペンダントを遺族は離さない 遺骨などを入れたペンダントを遺族は離さない

「死んだあの子はどうしているのか」。自死者の遺族の口からは、こんな疑問がたびたび発せられる。

長男を亡くした森田敦子さんも、三女が自死した藤山房江さんも「気の済むまで毎日、インターネットや本で調べました」という。「でも、自殺者は同じ地獄にずっととどまるとか、生まれ変わっても地獄だとか、ろくなことは書いていません」「だからもうやめました」。そんな時、遺族の集まりで同じように苦しんだほかの家族からの「あの世で楽しく暮らしているわよ」との一言で、ほっと救われた気持ちになった。「向こうで仲良しになってるかも」「空から二人で私たちを見てるわ」と、笑いさえ漏れた。

ただ「回答」を知りたいのではないこの問いは、宗教者にこそ向けられているともいえる。遺族会で僧侶たちが「亡くなった方は皆、穏やかに過ごしておられます」と語る。「それを私たちは聞きたいのです。何度も」と房江さんは話し、仏壇を新調した。敦子さんは、泣き暮らすのを見た次男が「兄ちゃん、ここにいるよ」と小さな簡易仏壇を小遣いで買ってくれた。

敦子さんの供養ペンダントに長男の遺髪しか入っていないのは、葬儀後に親戚から「こんな死に方したらたたる」と先祖代々の墓への納骨を拒まれ、仕方なく全骨を合同永代供養墓に納めた後だったからだ。房江さんは新たに墓を作ったが、娘の遺骨は「一人じゃ寂しいから」と入れず、自分の死後に合葬することにしている。通り一遍の形式的な葬送儀礼ではなく、遺族の集いなどの場で、亡き肉親への思いに沿ったやり方をそのまま認めてくれた僧侶が二人の背中を押してくれた。

ただでさえ悲嘆のどん底にいる自死遺族の心には、宗教者の態度が救いになることもあるが、逆の場合も多い。房江さんは葬儀会社が紹介した僧侶に三女の弔いを依頼したが、その日たまたま別の場所でも自死者の葬儀をしてきたその僧侶はそれを臆面もなく口に出した。「日に2件とはなあ」との言い方に、房江さんは「坊さんという職業なんだ」と感じた。葬儀では法話もねぎらいの言葉もなく、戒名の意味も知らされなかった。敦子さんも「うちの葬式でも同じで、とても事務的でした」と言う。

支援団体でもいろんな例が指摘される。菩提寺の住職に葬儀を断られ、別の寺でも拒否された。葬儀で「四十九日まで戒名は付けない」と言われた。「30代たたる」と公言する僧侶。ある遺族は「自殺は殺すという字が入っているから罪で、浮かばれない」と僧侶に言われ涙で抗議した。一目で自死だと分かる戒名を付ける住職もおり、自死した息子の戒名に「自戒」の文字を入れられた揚げ句に修正を求めると「戒名料」の上乗せを要求されたケースもある。

房江さんが救いと感じたのは遺族会を催す僧侶の法話だった。「人の死期が近づくと、先に向こうへ往った有縁の人々が集まって待っていてくれます。そして蓮の華に包んで温かく迎えてくれるのです」。房江さんは胸のつかえが氷のように溶ける思いがした。「娘も優しく迎えられたんだ。私もいずれ娘たちに迎えてもらえる」と安堵し、夏に蓮の開花を見に行った。「お坊さんは、私たちよりも死んだ人たちに近いところにいるんでしょうね」。自死に向き合う関西僧侶の会のある僧侶は言う。「袈裟を着けているときに発する言葉の重みは10倍重い。苦しむ遺族の心に寄り添う言葉を言えるのが僧侶のはずです」

(北村敏泰)

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