PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
2025宗教文化講座
PR
2025宗教文化講座

戦争とAI 血の通った倫理的判断を(1月22日付)

2025年1月24日 09時20分

AI(人工知能)を搭載した精密誘導兵器が初めて本格使用されたのは、今から35年前の湾岸戦争の時であった。この兵器には、利口で賢いという意味のスマートという形容詞が冠せられた。当時、ピンポイント爆撃と呼ばれた映像をニュース報道で見た人も多いと思う。それがまさにこのスマート兵器だった。その後、スマートという言葉がAIと同義に用いられ、AIを搭載した携帯電話はスマートフォンと呼ばれるようになったという。このように、最新テクノロジーはまず軍事利用として開発されるのだ。

私たちが生活のあらゆる場面でスマートフォンを手放せなくなったように、AI搭載のスマート兵器は戦争時に不可欠な武器となっている。コンピューターは生身の人間よりも記憶力や計算力に優れているばかりではない。近年開発された対話型生成AIは、自動的に機械学習を重ねて、より高度な応答や判断を提示してくれる。問題はそれがどのような目的で使用されるかだ。

スマート兵器と呼ばれた頃はまだ人間が遠隔操作していたが、搭載AIの機能が進化してくると、敵を識別して致命的打撃を与えるところまで自動化されることになる。アメリカ、ロシア、中国などの軍事大国は、そのような自律型致死兵器システムの開発にしのぎを削っている。恐ろしいのは、AIの軍事利用は個々の兵器レベル、戦闘レベルにとどまるのではないということだ。これまで交戦国の指導者たちは、戦争の立案からその遂行に至るまで様々なシミュレーションを描いて、敵にどう勝つかを検討してきた。しかし、近未来ではそうした戦争プランをAIに任せ、その最適解を出してもらうという事態も予想される。

人間がAIに重大な道徳的・政治的判断を委ねる時点を倫理的特異点(モラル・シンギュラリティ)ともいう。その最も危険な判断が戦争に関わる判断である。互いに戦争をしないという決断が最適解になるとは限らない。人間の関与を離れてしまえばどんな判断が出るか分からないし、誤作動の危険性も想定される。

だからこそ、政治家には、人間としての血の通った倫理的な判断を強く望みたい。そして同時に、政治家には、この人間的倫理のために常に宗教を思い起こしてもらいたい。なぜなら、どの宗教もいのちを大切にし、平和を擁護する教えを有するからである。宗教は倫理的判断の根底にあって、この判断を基礎付ける。宗教者が平和を絶えず訴え続ける役割もまさにそこにあるのだ。

ガザ無差別攻撃 武力信仰が支配する世界(7月2日付)7月4日

「膨大な軍事力でガザを無差別攻撃するイスラエル軍と、素手でがれきをどかし犠牲者を助け出そうとするガザ市民。この不釣り合いと不条理に怒りと心の痛みが募り、その日が広島原爆忌…

目には見えない時間 “準備”が生の舞台に結晶(6月27日付)7月2日

効率や決まり切った尺度によらずに物事を極め、またよく見るということについて、京都の能楽師・有松遼一氏の著書『舞台のかすみが晴れるころ』が示唆深い。表現する・演じるというこ…

「無宗教」増加の意味 人生において宗教は重要か(6月25日付)6月27日

墓じまい、檀家離れなどうそ寒い言葉で代表される現代日本の宗教事情は世界共通の傾向を背景としている。「無宗教」の人々の増加がそれだ。 アメリカの世論調査・研究組織ピュー・リ…

韓国・曹渓宗梵魚寺に集まった日韓両国の僧侶

韓国・梵魚寺に両国僧侶集い 新たな50年へ共同宣言 瞑想生活化・民間交流推進を 日韓・韓日仏教交流大会

ニュース7月4日

堂宇修復事業を承認 少子高齢化厳しい現状 本山・末寺に温度差 黄檗宗定宗

ニュース7月4日

学園補助金「交付可」議決 対話の可能性に向け 西山浄土宗臨宗

ニュース7月3日
このエントリーをはてなブックマークに追加