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宗教の衰退と復興 「世俗化」後のゆくえ(5月21日付)

2025年5月23日 09時05分

社会の様々な分野、諸制度において宗教が権威を失い、信仰が個人の領域に縮退するという世俗化の理論は、宗教信者数減少という現実を説明する。しかし、一方でロシアや中国、さらにトランプ政権下のアメリカでも、一種の宗教復興ともみられる動きが進む。

ロシアでは正教会が「ロシア世界」のイデオロギーでプーチン政権を支え、ウクライナ侵攻の戦略の一翼を担っていると批判される。中国では共産党の指導のもと「宗教の中国化」政策が強力に進められ、宗教に社会的統合の効果が求められている。中国仏教協会による宗教外交も党から推奨されている。

アメリカはピルグリム・ファーザーズ以来の建国の理念があり、政教関係もフランスのライシテとは大きく異なる。「無宗教」の層は確実に拡大しているが、トランプ氏は再選後、宗教(キリスト教)重視の政策を強く打ち出している。その独自の立場から「宗教の自由」外交を進めようとするので注意が必要だ。

これに対し、日本は「八紘一宇」のイデオロギーを担った国家神道あるいは伝統仏教教団の戦時教学という負の歴史体験を経ており、米中ロなど超大国の「宗教復興」、国家権力による宗教利用が含有する危うさをよく理解しているはずであると思われる。

ところで世俗化の理論は西欧社会をモデルにしたもので、それ以外のイスラムなどには必ずしもうまく当てはまらない。さらに合理化された社会の中で、スピリチュアルな宗教的なものが合理性に押し切られて存在の場所を失うかといえば、決してそうではない。

日常性を超えた超越的なものにシンパシーを持ち、死後の世界や来世を信じる人々は実はかなり多い。ピュー・リサーチセンターの最近の調べでは、国境を超えて多くの人々が動物や自然界(山や樹など)にはスピリチュアルなエネルギーが宿ると考えており、これは若年層と高齢者の間で大きな差はないという結果が出ている。

スピリチュアルなものに親和性がある人々の大半は、かつては組織化された伝統的な宗教に属していたが、現在は特定の宗派に関わることを避けるいわば無所属の信者になっていると考えることもできる。国家が政治権力を利用し、こうした層を国家宗教に取り込むという可能性は十分にある。

一方、独自の信仰によって立つ伝統教団においてもこうした人々をどのように取り戻すかが課題だが、その際、国家権力との関係の在り方が問われることは言うまでもないだろう。

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