PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

「何もしない」危うさ 断絶と排除を弱めるには(4月1日付)

2026年4月3日 09時47分

紛争やヘイトが頻発する世界状況を反映してであろうか、このところ断絶をテーマにしたシンポジウムや講演会の類が多い。昨年12月21日には日本学術会議主催公開シンポジウム「分断化する社会の中で対話は可能か――ポスト・ソーシャルメディア時代の社会構築」が開かれた。また去る3月11日には、例年行われるコルモス会議の公開講演会のテーマが「分断と排除に向き合って」であった。

社会的な分断や排除といった現象は、人間がなかなか克服できないままに、現代でも続いている。しばしばそれは悲惨な結果をもたらしてもいる。なぜこうした現象が絶えないのか。それを考えるとき、社会学者ジンメルの洞察は、今でも重くのしかかってくる。

ジンメルは社会関係の形式という視点を提起した。上下関係、分業、競争といった社会関係が、どのような社会分野にも生じることを論じた。対立は政治にも経済にも、宗教にも生じる。彼は社会関係について注目すべき洞察をなしたが、その一つが「よそ者」と「放浪者」の違いを論じる中に示した「排除されていないものは包括されている」という指摘である。

通常、少数者、弱者、よそ者などが排除されるとき、彼らを排除しようとしている人の存在が、排除の原因と見なされる。いじめの問題もそうであるが、いじめる人といじめられる人がいるから、いじめ問題があると認識される。

ところがジンメルは、通常どちらにも含まれてないと見なされる人に着目した。排除してもいないし、排除されてもいない人である。いじめで言えば、いじめても、いじめられてもいない人たちだ。

彼らが実際は排除する側に包括されるというのがジンメルの洞察である。差別や排除が社会にあっても、多くの場合どちらにも属さない人が圧倒的に多い。だがそれはジンメルの見解に従えば、排除する側が圧倒的に多いことを意味する。差別や排除される人が深く傷つき、絶望するのはこの構造がもたらすと理解できる。

何もしないでいる人に直ちに行動に移せというのも困難な話である。社会的に頻発する暴力的排除に立ち向かうのは勇気がいるが、この構図に気付くだけでも生じていることへの見方は変わる。

何もしないでいることは、排除する側、あるいは分断を促進する側に立つことにもなるという意識を多くの人が持てば、目にした情報への着眼も変わり得る。SNSが氾濫する社会で情報リテラシーを養うには、そうした基本的なものの見方を深めていく努力もまた欠かせない。

皇室典範改正案 国民の総意はどこに(7月10日付)7月15日

皇族数確保を目指す皇室典範改正法案は参議院に審議の場を移す運びだ。内容は、①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保ち、②旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎えるという二つの柱か…

戦犯者の叫び 戦争の不合理を繰り返すな(7月8日付)7月10日

敗戦後80年の節目といわれた昨年から一年が過ぎる。戦争の記憶から年を追うごとに遠ざかる一方、世界各地で新たに引き起こされる戦争で数限りない人々が死と抱き合わせの悲惨な現実…

急ぎ足の憲法改正論議 初心を忘れてはならぬ(7月3日付)7月8日

日本国憲法が公布された1946年11月、当時の内閣が小冊子『新憲法の解説』を公刊した。吉田茂首相が「民主主義憲法は国民の総意によって作られ、国民の総意によって解釈されるべ…

花園禅塾に女子枠 来年度新設、募集開始

ニュース7月16日
キリスト教の戦争協力について論じる辻子氏

キリスト教の戦争協力学ぶ 東西本願寺平和共同行動 決議文を採択

ニュース7月16日
御影堂で煤取りに励む職員ら

御影堂で煤取り 日鑑の記録基に 知恩院

ニュース7月16日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加