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2025宗教文化講座 第22回「涙骨賞」を募集

小欲知足の心 欲望追求から減速への転換(1月31日付)

2025年2月5日 09時23分

20年前、ケニアの環境副大臣だったワンガリ・マータイさんがノーベル平和賞を受賞した。グリーンベルト運動(植林活動)を通じて環境保護と民主化へ取り組んだ功績が評価され、環境分野として初、アフリカの女性としても史上初の受賞として話題を呼んだ。マータイさんの活動は地球規模の環境保護運動として世界に広がった。原動力となったのは「もったいない」という日本語である。

受賞の翌年、来日したマータイさんは、日本で「もったいない」という言葉に出会い、この一言にごみ削減や再利用、再資源化といった基本となる活動と、地球資源への尊敬の念が込められていることを知って感銘を受け、次世代へのメッセージとして世界に発信することを決意した。「MOTTAINAI」はSDGsの先駆けとなり、地球環境に負荷をかけない循環型社会の構築を目指す運動として様々な取り組みを生んでいる。

マータイさんの遺志をつなぐ人たちの中にブラジルの環境・気候変動大臣を務めるマリナ・シルバさんがいる。アマゾン奥地の貧しい家庭に生まれ、大学卒業後は環境保護と労働組合運動に身を投じ、上院議員に当選。熱帯雨林保護の法整備や温室効果ガス排出防止を目的とする基金の創設に尽力し、環境分野のノーベル賞とされるゴールドマン環境賞や、優れた環境活動家に贈られるソフィー賞などを受賞した。地道で根気のいる環境保護活動を継続していく上で、理念を象徴する言葉を世界の人々が共有する意味は大きい。

提案したいのはマータイさんに倣い新しい言葉を発信することである。経済成長を促す原動力となってきた資本主義の本質は、飽くなき欲望の追求であろう。地球温暖化や気候変動の進行を抑制するためには、人間の内なる欲望を制御する知恵が求められる。そうであるなら、どこまでも成長を追い続ける生き方を反省し、新しい文明論を樹立するための理念や、加速主義を転換して減速主義へ導く新たな一言を宗教者が提唱してはどうか、ということだ。

釈尊の最期の教えである『遺教経』に、諸仏が覚った「小欲・知足・寂静・精進・不妄念・禅定・智慧・不戯論」の八つの徳目(八大人覚)が示されている。現代文明の加速主義に対して、私たち一人一人が日常生活の中で実践できる行動があるとすれば、受けたもてなしで満たされたことへの感謝を込めて箸を置く「ごちそうさま」の心、あるいは欲を少なくして足ることを知る「小欲知足」の心がけではないだろうか。

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