世界各地の難民や子どもを支援する俳優 サヘル・ローズさん(38)
イラン・イラク戦争のさなか孤児となり、7歳まで孤児院で過ごした。養母に引き取られ8歳で来日。路上生活やいじめなど過酷な日々を過ごしたが、支えてくれる人々とも出会い、芸能活動を始めた。俳優・タレントとして活躍する一方で「自分と同じ境遇の人々を助けたい」と、世界各地で難民や子どもの支援活動を続けている。
渡部梨里
支援活動を始めた理由は。
サヘル テレビの仕事を通して世界には貧困や戦争で苦しむ多くの子どもがいることを知りました。私も養母と出会う前はその子たちと同じ境遇にいて、原点を忘れてはいけない、彼らのために何ができるだろうと考えるようになりました。10年以上前から個人的に活動を始め、孤児院に物資を送ったり、子どもたちが教育を受けられるような支援をしたり、各地の難民キャンプを訪れてその現状を伝える活動をしたり、特定の家族を支援したりしてきました。
今の世界の現状を変えるためには「人権と教育」が何より大切だと思います。いくらSDGsを推進しても、世界中で戦争が起こっていたら意味がなくなってしまう。戦争によって最初に失われるのは人権と教育です。先進国が途上国に教育を行き届かせることができれば、人々の生活が変わり、途上国ではなくなると思う。世界中に一定のレベルの教育の土台が整えられた先に、気候変動などの様々な問題解決の糸口が見えてくると考えています。
最近も難民キャンプに行かれていたとか。
サヘル 世界ではロシア・ウクライナの戦争やイスラエル・パレスチナの戦争が注目されていますが、ミャンマーのロヒンギャ迫害やシリア、南スーダンの内戦など、報道されなくなっただけで世界各地で今も多くの戦争が続いています。最近は2月にウガンダの難民キャンプ、3月にバングラデシュのロヒンギャの難民キャンプを訪れました。
ウガンダの難民キャンプで子どもたちが私の腕を触りにきました。白い肌の人に触れれば自分たちも白くなれる、そうすれば今の生活が変わると思ったみたいです。
社会は肌の色や人種、宗教など、様々なことでレッテルを貼り、排除して分断を起こします。過去には、優しく迎えてくれたシリアから逃れた人々に、私が日本人ではなくイラン人だと伝えた時、悲しいほど目つきが変わり、殺意のようなものすら感じました。イランがアサド政権を支援していることが原因で、国家の罪を背負うのは国民だと感じた瞬間でした。一方で、…
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