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暴走するトランプ政権 バランス感覚はどこへ?(4月3日付)

2026年4月8日 09時21分

時計の振り子のように米国の政治は伝統的に右に触れると左、左に触れると右と、バランス感覚が働く。ただ、それは国民が現実を正しく理解できてのことだ。トランプ大統領誕生以降、米国社会はインターネットのSNSなどで垂れ流される偽情報に惑わされ行き過ぎを止められず、振り子は戻らないかもしれない――と、米国の大統領選を5回取材し、2024年11月の大統領選を挟み1年間、米国各地をつぶさに取材して回った國枝すみれ・毎日新聞記者が著書『アメリカ・崩壊の地をゆく』で論じている。

正当性に乏しい2度にわたるイランへの攻撃、ベネズエラへの奇襲や高関税政策、先の大戦中に日系人強制収容にも用いた「敵性外国人法」まで持ち出しての暴力的な不法移民排除など、トランプ政権の専横が米国の脅威をあらわにしている。また、20年の大統領選敗北をかたくなに認めない姿勢は民主主義を否定するもので、支持者による議会議事堂襲撃事件を招き、国民の分断を深めている。

だが「米国を再び偉大な国に」に共鳴し、トランプ氏の発言をうそでも100%信じる熱狂的支持集団「MAGA」と、米国人口の4分の1というキリスト教福音派がトランプ政権を強力に支える。

軍事力を誇示するイスラエルと共同のイラン攻撃は、小学校への誤爆で児童170人超を殺害するなど民間人に多くの犠牲者を出している。世界が弱肉強食の世へと引き込まれないか、懸念を募らせているうち、不意に金子みすゞの作品「大漁」を思い浮かべた。

「朝焼小焼だ 大漁だ 大羽鰮の 大漁だ。浜はまつりのようだけど 海のなかでは何万の 鰮のとむらい するだろう」――視点を変え、小さな命を哀れむ感性はいとおしい。一方、イスラエル擁護は神の意志としてイラン攻撃を支援する福音派は、今の時代潮流に合うものなのか。

故中村元博士は、法門への固執を戒める初期仏典の「筏のたとえ」を引き「自分の宗教のみを称揚し、他の宗教を非難するものは、かえって自らの宗教を損なう」と説く(『仏典のことば』)。そもそも福音派が、超越した終末論を政治の場に持ち込み生じる対立は、世俗の論争を封じる恐れを生じさせる。民主主義の理念と相いれるものではなかろう。

そんな背景を持つ政権との向き合い方が、トランプ氏に追従する印象の強い高市早苗首相の姿勢でいいものか。國枝記者は、何より米国社会が事実を大事にしなくなったことを危ぶむが、それも含め冷静に見極める目が求められる。

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