皇室典範改正案 国民の総意はどこに(7月10日付)
皇族数確保を目指す皇室典範改正法案は参議院に審議の場を移す運びだ。内容は、①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保ち、②旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎えるという二つの柱からなる。問題は男系男子にこだわる後者の方だ。これにより、養子の子が男性ならば皇位継承権を有し、女性天皇・女系天皇の可能性を閉ざしてしまうからである。
どの世論調査によっても、7~8割は女性天皇・女系天皇を容認するという結果が出ている。これが民意である。2月の衆議院選挙で大勝した自民党は、本来ならそうした民意を最もくんでいなければいけないはずだ。しかし、あくまで男系男子に固執するあまり、天皇の地位が主権を有する国民の総意に基づくという日本国憲法第1条の規定を大きく逸脱したものになっている。
しかも審議の過程も不透明で性急なものだ。養子の子の皇位継承権に関わる規定は、政府与党が最終段階の条文案になって初めて打ち出してきたもので、与野党で取りまとめた立法府の総意をも踏み越えてしまっている。また、担当省庁である宮内庁の意見も徴していないと聞く。
天皇陛下自身でさえ、皇室の在り方や活動の基本は「国民と苦楽を共にすること」と述べた上で、皇族数確保について「国民の理解が得られるものに」という異例の発言をされている。この発言には重みがある。そもそも国民各層の思いを顧慮せず、政府与党がどうしてかたくなに皇室典範改正を急ぐのか理解に苦しむ。
男系男子のみに皇位継承権を与えるようになったのは、明治以後のたかだか160年の〝伝統〟に過ぎない。大日本帝国憲法下の旧皇室典範のこの規定を、第2次世界大戦後の日本国憲法下にあっても皇室典範がこれを引き継いだのである。
しかし、日本史をひもとけば、皇室の伝統は神話時代を別にしても、古代から連綿として続いている悠久な流れがある。飛鳥時代初期の推古天皇から奈良時代後期の称徳天皇まで6人(重祚を含めて8代)が女性天皇であったし、江戸時代にも前期に明正天皇、中期に後桜町天皇という2人の女性天皇が存在した。
翻って現代はジェンダー平等の理念が浸透している時代だ。我が国初の女性首相が誕生した以上、女性天皇が即位されてもおかしくはない。天皇は国民統合の象徴である。多くの国民は新しい時代にふさわしい天皇の在り方を望んでいる。今後は参院での審議に入ることになるが、党利党略にとらわれず「静謐な環境」の下で慎重に議論を進めていくべきだ。





